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羽川から聞いてはいたが、改めてそれを目の当たりにすると思っていた以上に心がざわついた。

毛利と仲良さげに並んで朝食を取っている璃亜は、確かに昨日の夕飯時より表現が柔らかい。

羽川は少し毛利さんと何かあったみたいで。と言っとったが、昨日の様子が変だったんはそれが原因だったみたいじゃな。しかも、それが解決したせいか2人の距離が近くなっとるみたいじゃ。



「あの雰囲気なんだよぃ」

「てか、前はもっとあの人に当たり強くありませんでしたっけ」

「羽川、どういう事?さっきは詳しく聞かなかったけど、何があったの?」

「何があったかまでは私も知らないけど、元の2人に戻ったって感じかしら」

「つまり、あの楠木さんの態度は変わったのではなく戻ったという事ですか?」

「えぇ、昔の璃亜と毛利さんはいつもあんな感じだったのよ」



柳生の言葉に少しだけすまなそうな顔をしながら頷く羽川に幸村が眉を寄せた。まぁ、幸村だけじゃなくブンちゃんも赤也もかなり機嫌が悪そうじゃが。

もちろん、俺も内心穏やかではないがのぅ。

それでもなく璃亜の過去を知っとる相手なのに、再会して1週間余りであんなに態度が悪かった璃亜が毛利が隣にいる事を許しとるとかどういう事ぜよ。それどころか、璃亜の表情を見る限り普通に嬉しそうじゃし。



「あれじゃねぇのか…黙っていなくなったって言ってたしよ、毛利が楠木に謝って許したみてぇな」

「察しが良いな、ジャッカル。恐らく、そんなところだろう」

「ん?和解出来たと言うなら良い事ではないか。璃亜も嬉しそうだしな!」

「確かに良い事かもしんねぇけど、俺からしたら全然嬉しくないッスよ」



あぁ、そうか。なるほどのぅ。そんな簡単な事にも気付けんとは、俺もかなり余裕がないみたいじゃな。

理由はどうであれ、素直に謝った相手を璃亜が突き放すはずはない。それが自分が信用してた相手なら尚更な。

しかも璃亜は、俺等に気付かんのに毛利がこっちに気付いとるのがまた腹立つ。余裕の笑みで毛利が俺等に軽く手を振ると、そこでやっと璃亜も俺等に気付いたらしい。



「…ふふっ、完全に挑発してるよね」

「じゃろうな」

「あのやろうムカつくぜぃ」

「ま、まぁ…とりあえず朝食を済ませましょう」

「ねぇ、羽川?」

「なにかしら?」

「前に羽川は口出すつもりはないって言ったよね?」



さすがの空気の悪さに羽川が口を開くが、それを遮る様にニコリと笑った幸村の意味深な言葉に羽川が黙るが少しの間を置いてゆっくりと頷いた。


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