やり場のない気持ち (1/4)
んー、今日も元気に下剋上。
そしてあたしは、元気ではないけど1年生ボコる試合を始めましょう。
ちなみに今回、あたしが選んだのは海堂くんです。
理由としては、海堂くんは持久戦が得意だと聞いていたので短期戦は苦手だと思った訳です。そしてあたしは持久戦が出来ないのでお互いに相性悪く、どっちが有利に試合を運べるかの勝負になる訳である。
「よろしこ〜」
「…ウス」
「あ、先に言っとくけど遠慮は要らないからね。練習にならないから」
「わかってるッス」
「まぁ、遠慮したら即行で終わると思ってね」
ニッコリと海堂くんに笑顔を送りつつ、足早にベースラインに向かった。
最初から持久戦をする気はないので、初っぱなから全力で攻めさせていただこう。
普通のサーブを打つと同時にネットダッシュを決め込み、普通に返って来たリターンをとりあえず全力で叩き込ませていただいた。スマッシュではないから、威力は然程ないが角度はかなり付けたからそれなりにいいボールだ。
が、それを渾身のダイブで打ち返す海堂くん。見事にあたしの遥か頭上を越えてバックコートへとボールは落ちた。
ほー、なるほどなるほど。
その執念で持久戦に持っていくのが海堂くんのスタイルって事か。海堂くんがヘビとかマムシとか言われてる理由がわかって、妙に納得した。
うーん。甘いロブなら余裕で取っちゃうどころか攻めちゃうんだけど、あれだけ高いロブ上げられちゃうとなぁ。
それに身長はもちろん、パワーでも勝ち目がないし。そうなると勝てる見込みがあるのは、瞬発力と跳躍力しかないんだよなぁ。
下手に中途半端に攻めても返されちゃうみたいだし、無駄に攻めて体力が消耗させるのは避けた方がいいな。
「あんまり…気は進まないんだけどなぁ」
「どうしたんスか?」
「…ん、あーごめん。次行くよ!」
「ウス」
そして普通にサーブを打って、またしてもネットダッシュを決め込む。
さすがにさっきよりも鋭いリターンが返って来て、とりあえず普通に返すと海堂くんもなんなく返球。
海堂くんは、仕掛けて来るつもりはないのかな?それともあたしに遠慮してるのかな。まぁ、どっちでもいいや。
そして、威力こそないが際どいコースを狙い少しだけ後ろに下がり、準備万端。
際どいコースでも執念で返してくる。でもやっぱり、どんなに返せても正確に打ち返さなきゃ…あたしには全部チャンスボールになっちゃうよ。
「はい、1ポイント」
「なっ…!」
「だから遠慮は要らないからねって言ったのに」
あたしが放ったボールは、海堂くんのラケットに当たることなくコロコロと転がりネットにぶつかると動きを止めた。
そして、試合終了と共に軽く頭を下げてからあたしはコートを足早に去った。
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