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俺の胸の中で大人しくしている璃亜がゆっくりと顔を上げたのがわかり、軽く璃亜の頭を胸に押し付けた。

今の俺は、きっと凄く情けない顔をしてるから。



「せ、精市っ…どうしっ、」


―――――♪


「"連絡します、楠木さーん!至急管理棟まで来て下さーい。繰り返します、楠木さんは至急管理棟まで来て下さーい!"」



璃亜が口を開くと同時といったタイミングで齋藤コーチの声で放送が入った。しかも至急管理棟にって…タイミングが良いのか悪いのか。

さすがに行かないでと引き留める事は出来ないので、ゆっくりと璃亜の事を離すと璃亜が心配そうな顔をして俺を見上げていた。

俺は、璃亜にそんな顔をさせたかった訳じゃないんだけどな。璃亜は、優しいからきっと俺を置いて行く事を躊躇ってるんだろう。



「行っておいで。管理棟ならこっちの道を真っ直ぐ行けば中央コートが見えてくるから、中央コートまで行けばわかるだろ?」

「ん、わかった。精市は?」

「もう少しここにいるよ」

「そっか」

「ほら、行っておいで」

「じゃあ話が終わったら連絡する」

「うん、わかったよ」



ゆっくりと立ち上がり俺に言われた通りに中央コートに続く道を走って行く璃亜が不意に振り返ったので笑顔で軽く手を振ってあげた。

…きっと俺に何かあったと思って、心配してるんだろうけど…正直、璃亜に言うような事じゃないんだよね。

ただ璃亜に傍にいて欲しかった。他の奴等のところに行かないで欲しかった。本当にそれだけ。

璃亜が毛利さんと付き合ってたって聞いて、なんともいえない気持ちにはなったけど…やっぱり璃亜と話すとそのモヤモヤは消えたし。

まさか自分がこんなに単純な性格だとは思わなかった。そんな事を思いながら自嘲気味に笑った。



「やはり、ここだったか」

「蓮二か。俺になにか用?」

「少し様子が変だったのでな、気になって来てみたんだが…要らぬ心配だった様だな」

「ふふふ、心配してくれたんだ?」

「それなりに、な。楠木の事なのはわかっていたからな。その様子だと楠木と何かあったのか?」

「特になにもないよ。強いて言えば、俺に余裕がなかったって事くらい」



璃亜が去った後、芝生に寝転がってボーッと空を見上げていたら不意に声を掛けられた。だけど、声で誰かなんてすぐわかってゆっくりと目を瞑り笑った。

ふふ、蓮二にまで心配掛けちゃったか。

本当に合宿が始まってからダメだなぁ。


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