まだまだ苦労は続く (1/4)
やっぱり、いくら嘘だとわかっていても璃亜の事になると不安になるのは、それだけ璃亜の気持ちがわからないからだ。
元から人の表情が気持ちを読み取るのは得意な方だったけど、璃亜については全くわからない事だらけだ。普通とは違う考え方に加えて、予想も出来ない行動をする。
だからこそ、璃亜に興味を持ったのかもしれないけど…今はそれが不安で堪らない。
俺の知らないところで無理して怪我をしてるんじゃないか、他の奴等に触れられてるんじゃないか…と考え出したらキリがない。
「今度は、急に黙ってどうしたの」
「ちょっと考え事を、ね」
「ふーん?」
「ふふ、聞かないの?」
「だから、精市は聞いても素直に答えないでしょーよ」
「…ふふふ、そうだね。璃亜は、本当に優しいね」
…そして罪深いよね。
意味がわからないといった表情で俺を見ている璃亜の肩に寄り掛かる様にして頭を預けると、少しだけ璃亜の肩に力が入った気がした。
俺を警戒をしてるんじゃなくて、ただビックリして何かあったのかと俺を心配してるんだろうなと感じた。むしろ、俺が何を話すのか構えてる感じかな。
正直、璃亜に言いたい事は山程ある。だけど、それを言うのが怖いから誤魔化す様に璃亜に甘えるんだ。
今、璃亜に俺の気持ちを全て伝えてしまったら…きっと璃亜から笑顔が消えてしまう。自信が全くない訳じゃない…だけど、やっぱり璃亜の心に自分がいるのか確信がないのは事実だ。
気持ちを伝えるのは簡単だ。
でも伝えられた方は、そうはいかない。それが璃亜なら尚更だ。人の気持ちを第一に考える優しい子だから、きっと悩ませてしまう。
「ねぇ、璃亜?」
「ん?」
「璃亜は、変わらないでね」
「は?変わらないよ。てか、変わる必要ないし」
「ふふ、それならいいんだけど」
「いや、本気で意味がわからないんだけっ…ちょ、精市!?」
ゆっくりと璃亜の肩から頭を上げて不思議そうな顔をしている璃亜を抱き寄せるとビックリした声をあげながら俺の胸を軽く押した。
だけど、俺が黙っていると何かを感じたのか胸を押していた感覚が消えた。
やっぱり璃亜はズルい。嫌なら嫌だって本気で嫌がればいいのに、それをしない。というか、もはや本気で嫌がってない事がズルい。
普通なら俺に気があるんじゃないかと勘違いするに決まってる。
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