イデアの箱庭 | ナノ
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手当てをするからと白い扉の部屋に赤司くんに連れて来られた訳だけど、なんとなく気まずい。

今吉さんが女の子同士の方がいいんじゃないかって、桃井さんって人を呼んで来るって言ってくれたんだけど…何故か、赤司くんがわざわざ自分が手当てすると譲らなかったのだ。

いや、アレかな…。やっぱりまだわたしを信用出来ないから、他の女の子と一緒にさせるのは怖いみたいな?

…うん、有り得る。
なんか花宮くん達のせいなのか、お蔭なのか…すっかり卑屈になってしまった。



「沢村さん、手首を出して貰えますか」

「えっ、はい…お願いします」

「そんなに畏まらないで下さい。俺が手当てを買って出たのは、沢村さんと少し話がしたかっただけで、特に深い意味はありませんよ」

「…そう、ですか」

「全く疑っていないと言ったら嘘になりますが、沢村さん以上に疑わしい者がいますからね」

「えーと、赤司くんにくっ付いてた子…だよね?」

「名前は、倉多リリア。彼女曰く、都内の女子高に通う1年生らしいです」



…都内の女子高かぁ。
それなりに数もあるし、制服だけで判断出来る程の知識もないので…わたしには何処の女子高かまではわからないや。

そもそも、赤司くんの言い方からして…本当なのかどうかも怪しいって感じだよね。わたしなんて、学校名まで言ったのに。というか、原くんに普通に言い当てられたからね。

まぁ、わたしの高校は制服が可愛いだけが取り柄のバカ校だから仕方ない気もするけど。



「彼女の名前を聞いた事とかは?」

「…いや、全く」

「確か、沢村さんは俺等の事も知らなかったんですね?」

「まぁ…うん。バスケに興味ないし、運動部でもないから。チョロっと名前を聞けば、もしかしたら…って感じかな」

「キセキの世代って言葉を聞いた事は?」

「んー…ない、かな? ちなみにどんな意味なの?」

「…なるほど、そのレベルでしたか。では、青峰大輝、黄瀬涼太、緑間真太郎、紫原敦の名前も聞き覚えはないですかね?」

「んー、あっ…黄瀬涼太は知ってるかも? モデルの雑誌でチラっと名前を見た様な? 興味ないから…見間違いかもしれないけど、金髪で綺麗な人だった気がする」



た、多分、多分…だけどね。
友達がキャーキャーとキセリョが格好良くて死ねるとか騒いでて、チラって雑誌を見た時にそんな感じの名前と金髪のモデルが載ってた気がする程度の認識だ。

いや、モデルとか芸能人にあんまり興味ないから全く知らないんだけどさ。

丁寧にわたしの手首に包帯を巻いてくれている赤司くんに、そのまま伝えるとピタリと赤司くんの手が止まったかと思ったら小さく吹き出した。

え、わたしなんか変な事でも言った?


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