イデアの箱庭 | ナノ
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花宮くんと瀬戸くんが帰って来たのは、高尾くんが帰ってから随分と経ってからだった。

しかも帰って来るなり、花宮くんの機嫌が頗る悪くて…なんかもう息が詰まるくらいしんどかった。それに瀬戸くんも花宮くん程ではなかったけど、かなりピリピリしてて…余裕がない感じで怖かった。

で、更に原くんから高尾くんが部屋に来た事と倉多さんについての話を説明した結果…



「キョロキョロすんな、鬱陶しい」

「だ、だって…」

「適当に相槌打ってるフリだけしとけって言っただろ」

「会話もしてないのに相槌が打てる訳ないよね!?」

「フリだっつってんだろ、バァカ」

「そ、そんな無茶な!!」



何故か、頗る機嫌が悪い花宮くんとロビーに居ます。ちなみに睡眠時間なので、部屋ではわたしと花宮くんを除いた4人が寝ている。

相変わらず、なんの説明もないまま言われた通りに花宮くんに付いて来たんだけど…本当に意味がわからなくて困っている。

しかも、高尾くんが言うにはロビーは倉多さんに監視されてるみたいだし…物凄く落ち着かない。



「ねぇ、花宮くん…」

「なんだよ」

「此処…ロビーって監視されてるんだよね?」

「どういう方法でロビーの状況を把握してるかは知らねぇが、会話までは聞かれてねぇよ」

「そうなの?」

「逆に今までの会話が筒抜けだった場合、あんな呑気にしてねぇだろ。どんなに頭お花畑のポジティブ野郎だろうが、散々話題に出されてあんな会話されてたら普通は焦るだろ」



確かに、それはそうだ。
となると、本当にこのロビーを見てるだけって感じなのかな?

チラリと倉多さんがいるであろう部屋に視線を移す。

あの部屋から盗み見をしているとは思えない。それなりにロビーは広いし…仮に全体を見渡すとなるとドアは全開にしないと無理だと思うし。

……となると、やっぱり監視カメラとかがあるのかな? って思って何かないかとキョロキョロしてたんだけど、それっぽいモノはない。

壁には何一つないし。
観葉植物すらない。

あるのは、テーブルとソファーくらいで…



「ま、まさか!」

「ねぇよバァカ」

「まだ何も言ってないよ!?」

「恐らく、隠しカメラとかそんな簡単なもんじゃねぇよ」

「……そ、そっかぁ」

「お前、此処で目覚ました時に何も持ってなかったよな」

「えっ、多分…。原くんにチェックもされたし…そもそも、手錠で動けなかったし…」



本当にわたしは、何も持ってなかった筈だ。そもそも、自分で確認する前に原くんに散々チェックされたしね。

…となると、他のみんなも何も持ってなかったって事なのかな? だけど、何故か倉多さんは謎のネックレスをしてるって高尾くんは言ってたよね。

いや、アクセサリーは持ち物に入らない可能性もあるよね。



「アクセサリーも持ち物に入るのかな」

「普通に入るだろ。まぁ、お前はアクセサリーとか付けるタイプじゃねぇだろうけど」

「し、失礼な! …まぁ、付けないけどさ」

「でだ、原とザキはいつもピアスをしてた筈なんだが…今は何故か何も付いてねぇ訳だ」

「……やっぱり、倉多さんのネックレスが怪しいって事?」

「ネックレスをしている事は赤司から聞いてはいたが、トップが何かまではわからないって言っててな。で、高尾がチラリと見たって言って描いたトップに見覚えがあんだよ」



本当にわたしが知らない間というか、いない間に色々と話をしていたのはわかったけど…それをなんの躊躇もなくポンポンと話す花宮くんににわたしの頭がパンク寸前である。

…しかもそれなりに重要な事だよね、それ。


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