19*(2/4)
階段を上がり始めて数分、わたしは物凄く疲れている。慣れない階段を長い間、上り続けている上…花宮くんと手を繋いでいるという気恥ずかしさから、かなりしんどい。それに全身ずぶ濡れな為、普通に寒い。
「はぁっ…はぁ、ま、まだかな?」
「…お前、体力無さ過ぎだろ」
「うっ…し、仕方ないじゃん。わたし、運動得意でもないし」
「チッ、少し休んでから行く。ただし、座るなよ」
「えぇ…休んでもいいのに、座っちゃダメなの?」
「何かあった時にお前、すぐに反応出来んのかよ。それでもなく、どんくせぇのに」
うっ…そう言われてしまうと、確かにそうだ。ていうか、花宮くんはわたしと違って息ひとつ上がってないし…わたしが時間を掛けさせているので少し呼吸が落ち着いたら、すぐに行こう。
わたしが呼吸を整えている間も花宮くんは、わたしの手を離さずにいてくれて…周りを警戒していた。
や、やっぱり…なんだかんだ花宮くんも優しいよね。言葉足らずな時もあるし、逆に一言多い時もあるけど。
「もう大丈夫、行こう」
「もしこのまま外に出れるなら、そろそろ地上に出るだろうから踏ん張れよ」
「そうなの?」
「段数的にな。まぁ、正確じゃねぇから期待し過ぎんなよ」
「そっか…わかった」
それなりの段数を上って来ているが、特に何もなく…景色も変わらないから余計に精神的に堪えてるんだろうな。いつまで上ればいいのかが、わからないし。ゴールが見えないのが怖くて辛い。
呼吸は落ち着いたけど、階段を上がる足が重い。ここから早く出たいと思っているのに、体はなかなか前へ進もうとはしてくれない。
そんなわたしを花宮くんが何度も様子を伺う様にチラリと見てくる。
あ、足手纏い…だよね。
そんな事を思いながらも、必死に階段を上がる事更に数分…花宮くんが足を止めた。そして疲労からなのか足元が覚束無い為、下ばかり見ていたわたしがゆっくりと顔を上げるとそこには扉があった。
「へぇ、シンプル故にクソみてぇな事を言ってやがるな」
「…はっ、…そ、そっかぁ…1人だけ…」
「………」
「は、花宮くんっ…が入っていいよ」
その扉にはこの扉は、1人用で1度使うと使用出来なくなるとの事だった。
そして息も絶え絶えの中、わたしは素直に花宮くんに譲ろうと思った。
本当ならすぐにでもここから出たいけど…わたしがここから出たところで、置き去りにした花宮くんを外から救う事が出来るかと言えば…間違いなく無理だ。
逆に花宮くんが1人で此処に残ったとして、花宮くんなら簡単に抜け出しそうな気はするんだけど…多分、わたしを殺したいらしいし? 他の逃げ道はないんじゃないかなぁ…とか思ったり。
なら、外から花宮くん達がどうにかしてくれるのを信じて…わたしが待ってた方がいいのかなって。
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