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わたしの鼻を啜る音に彼等がわたしが泣いている事に気付いた様で、ピタリと彼等の足が止まった。
気にせず歩いて欲しい。
どうせ、わたしは得体の知れない女であなた達からしたら怪しい人物なんでしょ。
悔しいが、わたしが彼等の立場なら同じ様にするだろう。だけど、わたしはとても悲しい。
「ほら、花宮がイジメるから泣いちゃったじゃん」
「っ、すみません…わたしの事は無視して下さい。何も知らないし、役にも立たないんで…放っておいて下さい」
「本当に何も知らないの?」
「…知りませんよ。気が付いたら、拘束されてた上にあなた達がいて…何の説明もなしに付いて来いって言われて…何がなんだかですよ」
「それが本当ならクソ可哀想で草。もはや、俺等が悪者じゃん」
「軽く説明してあげる? さっきは、反応薄いし怪しい感じしたけど…なんか現実逃避してただけっぽいし」
現実逃避をしていただけで、怪しい認定をされていた事に驚きだよ。急にこんな訳のわからない事になってて、あっさり受け入れられる方が有り得ないと思うんですけど。
悔しいやら腹立たしいやらで、更に涙が出て来る訳で…必死に涙を拭いながら彼等を睨む。
それにわたしからしたら、あなた達の方が怪しいんだからね! と言いたいところだが、生憎そんな元気も勇気もないのでただただ黙って鼻を啜る。
「ていうか、やっぱりあの女でしょ。正直、誠凜のカントクと桃井も怪しいけどさ」
「そもそも、俺等を知らないってのもでかいよね。まぁ、それが嘘ならお手上げだけど」
「うむ、花宮的にはどうなんだ?」
「相田や桃井が完全に白って訳じゃねぇが、まず理由がねぇ。それに比べてあの女は、一方的に俺等を知ってて…こいつは俺等を知らないと言ってる。つまり、そういう事だろ」
「いや、だから…ちゃんと説明してやろうぜ? 全く意味がわからないって顔して、更に泣いてるじゃねぇか」
本当にその通りだよ。
何も説明されずに、勝手に納得されても困るんですよ。
さすがに擦り過ぎて瞼が痛くなってきたので、必死に涙を止めようと努力するが…思っていた以上に参っている様でわたしの涙腺は壊れてしまった様だ。
そしてそんなわたしに困った様な顔をして、擦るなと腕を掴むちょっと目付きの悪い彼。正直、最初から彼だけはちょっとだけまともだった気がする。というか、ちょっとだけ彼からは気遣いを感じていた。
だけど、今のわたしからしたらそんなのは知らんこっちゃと言わんばかりに涙の大洪水である。
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