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やっぱり、どんなに普通に振る舞っても頑張って接しても…こうやって、怪しいと疑われてるんだなぁ…と染々思った。
…もちろん、わたしが自分から誤解を解きにいかないのも原因なんだけどね。
「えっ…いや、すんません! 今は、そんな風に思ってないんでそんな顔しないで下さいよ。いや、ほんとに!!」
「…いいよ別に。とりあえず、棟に戻ろうか。着替えもしなくちゃだし」
「あっ、ちょ…」
「高尾、お前は噴水の中でどれだけ無駄話をするつもりなのだよ」
「い、いやいやっ! 全然無駄ではねぇから!」
「緑間くん、これが噴射口の皿にあった鍵ね。わたしが持ってるとアレだから、メモと一緒に持っててくれると嬉しい」
「あぁ、わかったのだよ」
とりあえず、今はあんまり高尾くんと話したくないので逃げる様に噴水から出て、先程手に入れた鍵を緑間くんに渡す。
制服を軽く絞り、靴と靴下を濡らさない様に素足のまま棟へと戻る。砂利って訳じゃないし、特に怪我をする様なものはなさそうなので問題ない。
そして悪いと思いつつ一足先に棟へと戻ると、棟内を調べている大坪さんと宮地さんと木村さんの姿があり、軽く事情を説明して着替えを取りに行ってから、霧崎の部屋へと戻った。
…なんか凄い顔されたなぁ。
わたしが高尾くんと緑間くんに何かしたと思われたんだろうなぁ。
まぁ…別にいいけどね。
本当に何もしてないし。
もちろん、ショックだけど…前みたいに泣いたりしなくなった辺り、わたしも強くなったなぁ…とか思ったり。流石にここまで疑われ続けたら、慣れるというか…諦めもつくというか。
それにわたしを疑ってない人達もいてくれるし…まぁ、多分だけど。
そんな事を悶々と考えながらササッとシャワーを済ませて、詳しく報告をする為に部屋を出た。流石にこのまま部屋にいるのは、ちょっとね。いくら、高尾くんと緑間くんが報告をしてくれるとしても余りよろしくないだろうし。
そして大坪さん達と話す緑間くんが目に入り、彼が詳しく報告してくれてるんだとわかった。高尾くんの姿が見えない辺り、多分…シャワーを浴びに行ってるんだろうな。
ちょっと顔合わせ難いし、よかった。
「あの遅くなってすみません」
「いや、大丈夫だ。今、大体の事を緑間から聞いたところだ」
「案外、色々見付かったみてぇだな」
「殆んどは、緑間くんと高尾くんが気付いて見付けたモノなので…。一応、わたしに聞きたい事とかありますか?」
「あー…そういえば、お前って怪我してるんじゃなかったか? 噴水ん中に入ったみてぇだけど、怪我は大丈夫なのかよ」
「えっ、あ…大丈夫です。軽い打撲なので…特に問題はないです」
宮地さんが少し言いづらそうに、わたしの方をチラリと見ながらそんな事を言い出して…ちょっとだけ驚いた。
正直、緑間くんや高尾くんの心配とかわたしに探りを入れるような質問をされると思ってたから。
そして軽く自分の腕を掴みながら、大丈夫だと伝えた。流石にまだ痛むけど、別に水に入るくらいなら問題はない。もちろん、激しく動いたりぶつけたりしたらかなり痛いけどね。
そういえば、シャワーを浴びたから湿布とかも取っちゃったんだよね。後で、瀬戸くんに怒られそうだけど…濡れちゃったから仕方ない。自分じゃちゃんと確認が出来ないからアレだけど、ちょっと大袈裟な気がするから…湿布とか大丈夫なんだけどなぁ。
そんな事を考えていると何を思ったのか、緑間くんが "そこで待っているのだよ" とかなんとか言ってどこへ向かった。
そして気まずい中、仕方なく待っていると緑間くんが桃井さんを連れて来た様で、ニコリと笑顔を向けられた。
今吉さんから話だけは聞いてるけど、まともに話した事なかったはずなんだけどな…。
(話すのは初めてですよね。桃井さつきです)
(えっ…沢村奈々です)
(それで怪我の手当てさせて貰ってもいいですか?)
(えっ、いや…大したことないんで大丈夫っ…)
(今吉さんから聞いてるんで無駄ですよー?)
(……は? そんな酷いのか?)
(私は、重度の打撲だと聞いてますよ)
(骨には異常はないが、かなり酷いらしいのだよ)
(…えっ? えっ? なんで、)
(俺は、赤司から聞いているのだよ)
(はーい、じゃあ行きましょーか!)※いつもの押しに弱いヒロイン
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