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「もしもーし、生きてますかー?」
「おい、不用意に近付くな」
「えー? でもなんか拘束されてるっぽいし大丈夫そうじゃない?」
つんつんと頬をつつかれている感覚に重たい瞼を上げると、薄暗い視界の中に見知らぬ男子が小首を傾げていた。
……え、誰?
思わず驚いて身を退こうと体を動かそうとしたが、ガシャンッという金属音と共に手首に痛みが走った。
…はっ? え、なに? は?
急いで自分の手首を確認すると、わたしの手首に見慣れぬ黒い手錠がされていて…更に鉄の手摺に通されていた。
見知らぬ男子達に加え、自分が拘束されている事に軽くパニックになりながら腕を動かすが、ガチャガチャと激しい金属音が鳴るのみで手錠が外れる事はなかった。
「おい、うるせぇからやめろ。そんな事したって外れねぇ事くらいわかるだろ」
「…っ、」
「それで、どうする? 何か手掛かりがあると思ったら、更に面倒なもの見付けちゃったけど」
「余り役には立たなそうだが」
「…いや、手錠外してやらねぇの?」
特徴的な眉毛をしている男子に睨まれ、少しずつ冷静になって来る。不思議と怖さはなくて、この状況をただただ不思議に感じていた。
人から恨まれる様な事をしてないかと聞かれれば、多分Noだと思う。人間、誰しも誰かを妬んだり羨んだりするものだろうし。
そもそも、わたしはそこまで性格は良くない。だけど、それなりに友達もいたし、学校でも呼び出しくらいはされるにしろ…謹慎等になる様な問題を起こした事はない。
むしろ、そうなるとわたし以外に適任になる人物はたくさんいると思うし。
と、なると…無差別?
だからって、なんでわたしが。
そんな事をぐるぐると腕が拘束されているせいで、項垂れる様にして色々と考えていた。
「ねぇ、あんた此処が何処か知ってんの? ていうか、なんで捕まってんの?」
「…知らないし、わからない。むしろ、こっちが聞きたいくらいなんだけど」
「ふーん。で、この子どうする? このまま放置しとく? 此処、無駄に寒いし凍死しそうだけど」
「さすがに見てみぬフリは後味悪くね? 片方だけ外すとかでいいんじゃねぇの」
「…チッ、抵抗したら黙らせろよ。片方外して手摺から抜いたら、また手錠しとけ」
「おっけー。って事だから、無駄に動いたり抵抗したら容赦なく痛い事するからよろしくねー」
……目元が見えない分、3割増しくらいで怖いんだけど。口元は笑みを浮かべているけど、声色は威圧的で有無を言わさない雰囲気である。
そもそも、抵抗したらって…わたしには抵抗する理由がないんだけど。
それに今気が付いたけど、彼が言うように何故か此処は異様に寒いし。結局、手錠を掛けられるとしても此処にこのまま放置されるよりはかなりマシだ。
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