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花宮くんに怒られつつも、小声で瀬戸くんと言葉を交わしている内にどうやらお目当ての人達の元に着いたらしく、花宮くんが軽く振り返りわたしを確認した。
「こいつが北の棟で倒れてた。おい」
「え、えっと…××高校の沢村奈々です。花宮くん達に軽く状況は聞いっ」
「1階に沢村がいて、2階もついでに探索したが特に目星いもんはなかったな」
「…なるほど。兎に角、無事に戻って来れてよかったです」
「化物については、ゴリラみてぇな奴とゴブリンみてぇな奴に会ったが、原とザキが相手をして大した事はなかった」
「相手にしたんかい。ほんま、好戦的やなぁ…自分等」
うわぁ…。
あからさまに黙ってろと言わんばかりに、わたしの言葉を遮った花宮に仕方なく大人しくしている。
赤髪の彼と眼鏡を掛けた糸目の彼は、わたしに少し視線を移したがすぐに花宮くんに視線を戻した。そしてその赤髪の彼にくっ付くように隣で、ジーっとわたしを見つめる小柄な女の子がいた。
……い、居心地悪いなぁ。
それにしても、さっきから花宮くんから出て来る言葉に少し違和感を感じる。
なんか…嘘は言ってないけど、さっきから肝心な事を話してない様な? 机にあった物とか、オセロとトランプがあったとしか言ってないし。
「…ねぇ、この人ホントに倒れてたの? だったら、なんで手首が赤いの? 如何にも、手錠か何かが付いてて捕まってたみたいに…なんか怖いなぁ」
「えっ、」
「ねぇ、その手首どうしたの?」
「こ、これはっ…」
「…ふはっ、言えねぇよなァ? 化物を見て腰が抜けて動けなかった上に雪道を歩いてて転んだから、俺等に手首をネクタイで縛られて引っ張られてたなんてなぁ?」
「まぁ、原とか容赦なく引っ張ってたし。そりゃあ赤くもなるよね、それに普通に寒かったし」
「いや…自分等、相手は女の子なんやから…もう少し優しくしてやれへんの?」
…いきなり、女の子がわたしを睨むと手首を指差し、嫌な指摘をして来て咄嗟に隠す様に手首を掴む。
そして言葉に詰まるわたしに、花宮くんが嫌味ったらしく笑うと息を吐くかのように嘘を並べて行く。それに瀬戸くんが便乗する様にして、手首が赤いのは乱暴な原くんのせいという事になっていく。
最後に馬鹿にする様にわたしを見ながら "だよなァ?" と意味有気に笑みを浮かべる花宮くんに、わたしは頷く事しか出来なかった。
…なんだこれ、こわい。
「…っ、そ、そっかぁ。私、怖くて…てっきり貴女が犯人かと思っちゃった…ごめんね?」
「え、いや…大丈夫だけど」
「倉多さん、大丈夫かい? 少し顔色が悪いみたいだけど、先に戻って休んでた方がいいじゃないか? 君に何かあったら困るからね」
「っ! うん、わかった! 心配してくれてありがとう。じゃあ、私は涼太くんのところで休んでくるね。征十郎も早く来てね?」
「あぁ、話し合いが終わったら戻るよ」
きゅるるん! と効果音がしそうな笑顔を赤髪の彼に向けると、ペコリと可愛らしく頭を下げてからパタパタと如何にも女の子と言わんばかりの可愛らしい仕草で、走り去って行く彼女をただただ見送った。
さっき、鬼の様な顔でわたしを睨んでいた人間とは思えない代わり映えである。
いやぁ…女の子って怖いな。
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