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嫌だ、違う、っ…違う。
無理矢理腕を引かれ連れて来られたのは、マンションの一室だった。そして部屋に入り、目を見開きその場にヘタリ込む。
「ふはっ、懐かしいか?」
「っ、な…なんで…これ、」
「まぁ、話は後だ。今は、偽りの幸せに浸ってるお前にお仕置きしなきゃだからな」
「な、なんの話…? っ! 痛っ…」
「…お前を幸せになんてさせてやらない。ずっと俺に縛られて苦しんでればいい」
「…んぁっ! やだっ…嫌だ、 やめてっ…!」
「よーく思い出せ? 最初にお前を抱いたのは誰かを、」
…酷い、酷いよ、酷過ぎる。
涙で歪む視界の中で真は、愛おしそうにわたしに触れた。そして優し過ぎる手付きで、わたしを暴いていく。
何度も何度も見て来た天井。
壁もインテリアも…全部があの頃の真の部屋だった。嫌がらせだとか簡単に言える様な物じゃない。本当にあの頃を再現しているかの様で頭がおかしくなりそうだ。
そして簡単に一糸纏わぬ姿にされ、ベッドに縫い付けられたかの様に腕を拘束された。
「少し痩せたか? でも相変わらず、体型は変わってないな」
「っ、ん…なんで、こんな事…するの…?」
「本当はもうわかってるんだろ? まぁ、別にわからないならそれでもいいが…」
「……っ、やっ…ん、待って…やだ、やだっ…」
「お前の "やだ" は "もっと" って意味だったろ? なァ、梨華…?」
全部が、全てが支配されていく。頭が、心が、身体が…全てが真に支配されていく。
全てを知ってると言わんばかりに、真は簡単にわたしを壊していった。
薄れていく意識の中、真が何かを言っていた。優しい優しいキスをして、わたしの頭を撫でる真は本当に…昔のままで…涙が流れた気がした。
▼△▼△▼
そしてわたしが目を覚ますと、髪の毛を弄りながらジッとわたしを見つめている真がいた。
反射的に起き上がろうとしたが、ズキリと痛む下腹部と…鉛の様に重たい身体に思わず声が出た。
「体力なくなったなァ? それでも愉しいくらい反応して、何度も気持ち良さそうにイってたけどな」
「…な、ちがっ…」
「ふはっ、その絶望感でいっぱいって顔…最高だなァ」
「…っ、うっ…な、なんで…結婚して子供もいるくせに…」
「ふはっ、全く持って興味ねぇな。お前が悲しんで苦しんで…俺の事でいっぱいになる為に必要だっただけで "全部どうでもいい"」
「―――――」
絶句とはまさにこの事だと思う。然も当たり前だと言わんばかりに笑う真に目の前が真っ暗になった気がした。
わたしを必死に励まし支えてくれた彼を裏切ってしまった。その絶望感と罪悪感でジワジワと視界が滲んでいく。
全部、全部が、真の計算…? 今までのわたしの苦しみも悲しみも、真がわざとそうなる様にしてたって事?
真が何を考えているのか全くわからず、呆然とするわたしを真は満足そうに笑うとゆっくりとまたベッドにわたしを押し倒した。
…だけど、もうわたしには抵抗する気力は残っていなかった。
※待機組 (原・古橋)
(もはや、可哀想過ぎて笑える)
(それこそ今更だろう)
(結婚間近だったのにねー)
(それをお前が報告したんだろう?)
(まぁね。そういう話だったからね?)
(もはや、俺にはよくわからないが…花宮なりの愛し方って事か)
(花宮は、屈折し過ぎ歪み過ぎで修復不可能だからね)
(…椎名はまた泣いているんだろうな)
(むしろ泣いてない訳ないでしょ)
(本当に酷い奴だな)
(何を今更。それにそれを手伝ってる俺等もね)
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