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隠れているのをやめ、未だに梨華の言葉に納得していない木吉から奪うようにして梨華の腕を引き抱き寄せる。
ビクリと梨華の体が反応し、ゆっくりと俺を見上げる梨華の瞳には絶望の色が広がっていく。
「花宮、なんでお前が」
「久し振りだなァ、木吉。悪いが時間切れだ。梨華は、昔から俺のモノなんでなァ? 返して貰う」
「…じゃあ梨華が言ってる相手はお前なのか? いや、お前が無理矢理…梨華を抱いたんだろう?」
「ふはっ、仮にそうだったとしてお前はどうする? 俺を警察に突き出すか? 自分の恋人も守れず、更にはその傷を抉るのか?」
「や、やめてっ…! 鉄平、ごめんっ…ごめんなさい。 お願い、もうわたしの事はいいから…」
「そんな事出来る訳ないだろ! …花宮、頼む梨華を解放してやってくれ」
クソの様な茶番に吐き気がする。本当なら、今すぐにでも俺を殴り飛ばしたいくらい腸が煮えくり返ってる癖になァ?
だが、それでいい。
俺に頭を下げる木吉に梨華がそんな事しないでとやめてと腕の中で暴れるので、無理矢理口を塞いだ。
ふはっ…素直に反応するな、抑えが効かなくなる。
木吉が梨華の苦しそうな声に顔を上げた。そしてそれを見た木吉が冷静でいられる訳もなく力任せに俺と梨華を引き剥がし、俺の胸ぐらを掴み俺を殴った。
…あーあ、御愁傷様。
「っ、花宮! お前って奴は!!」
「っ、ぺっ…ふはっ」
「何がおかしっ…」
「…ま、真っ! っ、…大丈夫?」
「…な、梨華? なんで…」
「っ!…ち、ちがっ…鉄平、…わた、し…」
「ふはっ、残念だったなァ…木吉。だから言っただろ、昔から梨華は俺のモノだって。心も身体も全て、な?」
俺に駆け寄る梨華の姿に木吉の表情が歪み、それに追い討ちを掛けるように梨華のブラウスをずらして見せ付けてやった。
梨華の全身に散りばめられた印を見た木吉の表情はそれはそれは愉快なものだった。
誰が1度だけだと言った?
やめてと嫌がる梨華の首筋に軽く噛み付けば、ほらどうだ? お前の梨華じゃなくて、ちゃんと俺のモノだろう?
ビクリと反応し小さな声を漏らした梨華に木吉は、強く拳を握り締めたまま何も言わずその場から去って行った。
…ふはっ、ざまぁねぇな木吉。
そして木吉が去って行った事がわかったのか、さっきより嗚咽が激しい梨華の頭を撫でるとゆっくりと顔を上げたので、溢れ出る涙を舐めるとった。
これでお前には俺しかいない。
さぁ、ここまで堕ちて来い。
一生一緒に居てやるから。
※待機組(+ザキ)
(ん、木吉が来たぞ)
(え、ちょ、泣いてて草)
(ひでぇ奴だよなまじで…)
(だが、1番の被害者は梨華ちゃん)
(で、花宮ん家の方はどうなんだ?)
(瀬戸が上手くやってるってさー)
(自分の友人と嫁を浮気させるとはな)
(花宮は梨華ちゃん以外に興味ないからねー)
(だからってなぁ…)
(もうどうにもならんでしょ、花宮は)
(全く…椎名が不憫で仕方ないな)
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