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たった一言の別れの言葉にお前が納得するはずがないのは、わかっていた。
無理、嫌だ嫌だと泣きじゃくる梨華だったが、説得するのは簡単だった。なら、俺が話を付けると言えば嫌でも梨華は、自分でちゃんと話をすると言い出す。
あいつを、木吉を傷付けたくないからと。まぁ、俺からしたらそんなのは関係ねぇけどな。
そして真っ暗な公園でベンチに座り、木吉を待つ梨華の近くで隠れる様に待機していた。
暫くして、走って来たのか息を切らした木吉が現れ梨華がビクリと反応した。
「…悪い待ったか? それとここで寒くないか?」
「だ、大丈夫…だから」
「そうか…。それで、急に別れたいって…どうしたんだ? 俺がなにかしたなら言って欲しい」
「っ、…ち、違うの。わたしが…悪くて、ごめんなさい」
「…何があったんだ? 梨華が俺に謝る理由は…なんだ?」
「……っ、わた…し…が鉄平を裏切った、からっ…」
俯き声を震わせながら、必死に言葉を紡ぐ梨華に木吉は梨華が何をしたのかを察した様子で目を見開き、少し悲しそうな目をして梨華に触れた。
そんな木吉に梨華は、逃げる様にバッと手を引くとボロボロと涙を流しながら木吉に謝り続けた。
それでも木吉は、怒る事もせずただただ困った様に梨華の頭を撫でていた。
…………。
「…寂しい思いをさせて悪かった」
「ち、ちがっ…違うのっ…!」
「梨華が簡単にそんな事を出来ないのは、知ってるつもりだ。…もちろん、ショックだが梨華を責める気にはならっ」
「っ…! や、やめてっ…!!」
「…梨華?」
「…違う、わたしが、わたし…が悪いの。だから、もう…鉄平とは付き合え、ない…ごめんなさいっ、…うっ」
梨華は悪くないと、寂しい思いをさせた自分が悪いと梨華を許す気でいる木吉に梨華が必死に声を荒げる。
だが、まぁ…梨華にしては頑張った方だと褒めてやらない事もない。ちゃんと言い付け通りに理由も濁したし、木吉とは付き合えないと言った。
苦しそうに必死に胸を押さえながら、必死に木吉を自分から離そうとする梨華の姿はそれはもう殺してやりたいくらい愛おしい。言いたくもない言葉を吐いて、傷付けたくない相手を傷付けて。
誰の為でもなく、俺の為だけに自分を傷付け、木吉を傷付け苦しんでいる梨華に酷く満たされる。
だが、これで終わりなんて面白くねぇよなァ?
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