日常編 | ナノ
(1/4)

普通に意味がわからない。
いや、正確に言えば身に覚えが全くないんですが。ていうか、お前誰だよ。

目の前で、大変残念な顔をしながら叫び散らしている女にわたしはとても遠い目をしていた。

あぁ、今日は早く帰ってゲームをやるはずだったのに。必死にあのバカ共から逃げる様に部室を出たのに…なんて日なんだ。



「…えーと、勘違いじゃないかな? わたしは、原くんと付き合ってもいないし。ただのバスケ部の部員とマネージャーだよ」

「嘘よ! 絶対に嘘!! だって、一哉くんが言ったんだから! お前より千夏の方がいいって! だから、別れ…るって…」

「……名前が同じだけ、とかじゃないかな。わたしは、本当に原くんと付き合ってないし」

「絶対にあんたよ! 可愛くて真面目で完璧な子だから、お前に勝ち目はないって!!」



うわぁ…あのクソ野郎。
また適当な事言って、逃げたな。面倒臭い女を振る時にとりあえずみたいな感じで、わたしの名前出すのやめろよまじで。

しかも学校前で待ち伏せされてて、逃げるに逃げられないし。本当にふざけんなよ、あのクソ野郎。

その結果、物凄い注目を浴びながら一哉の元カノであろう女から言いたい放題言われている。ていうか、軽くわたしの事誉めてるよね? あれ、文句言いに来たんだよね、あなた。



「……っ、だ、誰にでも良い顔して!! このビッチ!!」

「えっ…」

「尻軽! 泥棒猫!! ちょっと顔が良いからって…人の彼氏を盗るとか…っ!!」

「………」

「猫みたいに一哉くんに擦り寄って…最低! 私がいるのに一緒に帰ったり…遊んだりして、…なんなのよ!!」



う、うわぁ…。
軽いストーカー発言にさすがのわたしもドン引きです。そして、そんなやべぇ女と付き合ってる最中にわたしと一緒に帰ったり、わたしを遊びに誘ったりした一哉はまじで死ぬべき。

ていうか、そこまで知っててわたしの本性を知らないのはちょっとビックリだけども。基本的に一哉といる時は、素だし。もちろん、周りに聞こえない様に小声だったりとか気を付けてはいるけどさ。

そして泥棒猫を連呼する女にどうしようかと考えていると、タイミングが良いのか悪いのか…部室で騒いでいたバスケ部一行が現れた訳だが。



「あれ、千夏じゃん。先に帰るって言ってたのにどうしっ…あー」

「うわ、俺先に帰るわ」
「じゃ、お疲れ様」
「あぁ、また明日」
「じゃあな」

「ちょ、はやっ! 待って俺も帰っ」

「か、一哉くん! 私、まだ納得してないっ…!」



そして一哉の元カノと瞬時に気付いた面々は、面倒臭いと言わんばかりに逃げる様にわたしを通り過ぎて行った。

…キレそう。

そして逃げ遅れた一哉は、元カノに腕を掴まれて見事に捕まっていた。クソざまぁ。

prev / next

[ back to top ]