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年が明けて、学校が始まるこの時期になると嫌でも気分が悪くなる。
自分の誕生日なんて、特に大切な事でもなければ思い入れもない。むしろ、アイツの子として誕生した日だと考えると忌々しいまである。
毎年毎年、嫌がらせの様に顔を出しに来るアイツに顔を合わせない様にと自分の誕生日に家に帰らなくなったのは中学生になってからだった。
小学生の頃は、わざと体調が悪いフリをして部屋から出ない様にしていたが…さも当たり前の様に母さんと一緒に部屋に入って来ようとするアイツに小学生ながらに部屋に鍵を付けたくらいだ。
「真〜って、なにその機嫌悪そうな顔。え、なに? データがミスってた?」
「…チッ」
「人の顔見て舌打ちしてんじゃねぇぞ」
「うるせぇ、さっさと帰れブス」
「お前がクソみたいな頼み事ばっかりしたから帰れなかったんだろ! クソがしね!」
それは確かに。
休み明けで色々と雑務が多く、俺だけじゃ手が回らなくてマネージャーである千夏に面倒なことを押し付けたのは認める。
だが、職員室から帰って来た千夏に余り触れて欲しくないところを突っ込まれたのでそんなんは知らねぇな。
…今は、頗る気分が悪い。
だから、さっさと帰れブス。
そしてプリプリと怒りながら、乱暴にロッカーを開き帰り支度を始める千夏を見つめる。
「…なに見てんだ、クソ眉毛。ジッと見てんじゃねぇぞ」
「…別に、いいからさっさと帰れよ」
「言われなくても帰りますー」
「………」
「…はぁぁぁ、なんなん? お前さぁ…そうやって、目で訴え掛けてくんのやめろや」
「なんも言ってねぇよブス」
「目だって言ってんだろクソ」
何を思ったのか乱暴にロッカーを閉めると、大きな溜め息を吐きながら千夏が隣のパイプ椅子に座った。
帰んねぇのかよ、このブス。
なに隣に座ってんだ。
相変わらず、変に勘が良いと言うか空気が読めない奴である。早く帰れっつってんのに、帰らねぇとか逆に嫌がらせをされてる説。
「つーか、中学ん時もあったな…こんな感じの時」
「さぁな」
「毎回、この時期だよね。つーか、分かりやすくて草」
「うっせ、しね」
「中学ん時は、理由もなんも興味なかったし? なんなら、真の弱味が握れるかもって感じで付き合って残ってたけどさぁ」
そんな昔の事を千夏が覚えている事に驚くが、確かに…中学の時はやたらと理由を付けて俺と一緒に残ってたな、コイツ。
理由はクソだが。
つーか、今は中学ん時と違って理由がわかってんなら放って置いて帰れよ。
「家に帰りたくないとか反抗期かよ、草生える」
「…殺す」
「事実、帰りたがんないんだから仕方ないね。つーか、中学の時から誕生日前後はピリピリしてたし」
「うぜぇ」
「まっ、真の誕生日とか正直どうでもいいんだけどさ。真の機嫌悪くてこっちに当たられるのは腹立つから、今年も付き合ってやらん事もない」
「何様だよ」
「千夏様だよ」
「死ねよ」
本当にコイツは頭がおかしい。
そして、腹が立ってんのは俺の方だからな。
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