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部長兼監督である花宮が部活を休みにするのは、息を吐くように簡単な上にありもしない嘘で千夏を連れ出すのも簡単だ。
「は? マジで意味わかんないんだけど、何が楽しくて真と健ちゃんとお泊まりしなきゃなんないの? つーか、プチ合宿って話どこいったし」
「んなもんある訳ねぇだろバァカ」
「千夏に息抜きして欲しいって花宮が」
「あ? 言ってねぇよ」
「似た様なもんでしょ」
兄貴の運転する車の中で何がなんだかと言わんばかりに文句を言っている千夏を無視して、車は目的地へと向かう。
ちなみに助手席に俺が座ってるから、後部座席に千夏と花宮がいるんだけど…なんか物凄く空気が悪い。まぁ、2人でいる時に空気が良い方が珍しいから別に気にはならないんだけど。
そして理由を話すつもりもなければ、今のこの状態について説明をする気のない花宮に千夏が不満そうな顔をしている事に兄貴が気付いたらしく、小さく笑いながら俺等をフォローする様に口を開いた。
「千夏ちゃん、最近ずっと無理してたんだって? 健から聞いたよ。たまには、都会から離れた自然の中でリフレッシュするのも大切だよ。それにちゃんと自分にも優しくしてあげなね」
「別に…無理は、してないです」
「ダメだよ。それでもなく、千夏ちゃん達の振る舞いは俺から見ても危ういんだから。まぁ、俺はメンタルケアは専門じゃないから余り役には立てないけど、息抜きの足くらいにはなってあげれるからいつでも言うんだよ」
「…ありがとう、ございます」
「色々と考える時期だろうし、たくさん悩むと思うけど。まだ子供なんだから、頼る事もしようね。大人が嫌いなら、近くに健や真くんだっているんだし。もちろん、俺でもいいしね」
良いところを根刮ぎ持って行く兄貴にちょっと不満があるが、千夏が素直に頷いてるところを見ると、それなりに受け止めてるっぽい。
そもそも、千夏の猫被りを知ってる上に本性を知っている大人がそういないのも大きいけど。大体の大人は、優等生で良い子な千夏しか知らないし…そもそも、知ろうとしないからね。
「テメェは、無駄に考え過ぎなんだよバァカ」
「うるせぇバカ」
「バカはテメェだバァカ」
「まぁ、花宮も千夏の事言えないけどね」
「健太郎は黙ってろ」
「いや、黙らないけどね」
そしていつもの様に軽快に毒を吐くようになった千夏にちょっとだけ安心しながら、花宮と千夏の言い合いを聞きながら目を閉じた。
いや、うん…俺、普通に眠かったからね。
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