後日談(1/4)
んー、眠いなぁ。
人を待つのは嫌いだし、苦手だ。というのも、この相手にするのも面倒臭いナンパ野郎共が湧いてくるからだ。
やめて下さいといかにも困ってますオーラを出してもいいが、それもそれで面倒臭い事になるので怯えた表情しつつ無視が1番なんだよなぁ。女の子をナンパから助けた俺かっこいい! ついでにこのまま仲良くなろう! みたいな奴が更に出てくるからね。
そしてボーッと無視を決め込むわたしに、必死に話し掛けるよくわからん男共にイライラしているとポンッと肩を叩かれた。
「すまんな、待たせてもうた。で、ワシの彼女になんの用や?」
「…チッ」
「行こうぜ」
「ははっ、遅れてすまんな」
「…そう思うなら、もう少し申し訳なさそうな顔してくれます?」
「怯えた表情作りつつ、大人しく黙っとる千夏がおもろくて、つい…な?」
「ははっ、死んで下さい」
まるで悪びれた様子もなく薄ら笑いを浮かべている今吉さんに、とびきりの笑顔を向けるとクツクツと愉快そうに笑った。
まじでこの人、死んでくれ。
急に呼び出しといて、待たせるとかまじクソなんだけど。しかも、場所が場所なので余り猫被りを外せないのが辛い。
ていうか、絶対にわざとだ。
わたしの猫被りを見たいが為にわざわざこっちで待ち合わせしただろ。本当にクソでキレそう。
そして近場のマジバに入り、適当に注文をして席に座った。
「それでなんの用ですか。わざわざ、真に部活が休みの日まで聞いてまで逃げ道を無くすとか」
「いやぁ、せやかて千夏がなかなか会ってくれへんのやもん」
「別に生きてますし、普通にピンピンしてますって言ったじゃないですか」
「それでも顔見て安心したいやん。ワシが見た千夏の最後、目隠しして泣いとる姿やで?」
「いや、まぁ…それもそうですね」
確かに今吉さんが言う通り、あの姿が最後となれば…ちょっとは心配もするか。でも申し訳ないが、あの時はまじでメンタルキツかったしグロッキー状態だったけど、帰って来たわたしはいつも通りだ。
そもそも、あの出来事が非現実的過ぎな上に色々と醜態を晒したので、もはや夢だと思って忘れて欲しいくらいには黒歴史である。
いや、まぁ…まだそこまで日は経ってないけどさ。
「せやけど、ほんまに良かったわぁ」
「それは何度も聞きましたって」
「いや、ちゃんと顔見るまで安心出来ひんかったわ。千夏は、猫被りも嘘も上手いんやから」
「まぁ、自分でも驚くくらい冷静だったって言うか…取り乱したりはしなかったんで。あぁ、帰って来たなぁ〜みたいな感じで」
「だからや。桃井なんか目覚ました瞬間大号泣で、他の連中も顔真っ青にしてお通夜状態やったで」
「えぇ…うちの連中はいつも通りでしたよ。やっぱり、うちの連中は頭おかしいんだな知ってたけど」
…んんんー、でも別に今吉さんが心配する様な事はなかったって言うか…まぁ、そもそも桃井とわたしを比べちゃダメだよね。ていうか、あれと同じとか勘弁。
とりあえず、なんか知らんけどわたしを心配してくれてたみたいだから、大丈夫な事を伝えるしかない。
むしろ、うちの連中がいつも通りだから考えもしなかったけど、生活に支障が出るレベルで引き摺ってる奴とかいてもおかしくないんだよなぁ。
ま、興味ないけど!
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