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ここに来るのは、2度目だな。
こんな長い間、放置してて悪かったな。
「久し振り〜、千夏。待たせてめんご」
「これは、詫びの千夏が好きだったお菓子だ。探すのに苦労したんだぞ」
「俺等からはこれな。でも怒ってるんだろうなぁ…」
「間違いなく怒ってるだろうな。放置しやがってクソが!とか言ってそうだ」
1度目はある程度自分達の心の整理をし終え、報復を誓った日に全員で訪れた。深夜の墓参りで、その時も "こんな夜中に来やがってと怒ってそうだな" なんて会話をしながら千夏の生前好きだった物を適当に持って来てやった。
それから約10年。
先日、やっと自分達の報復を終えた俺等がまたここへと訪れた訳だ。本当にただの自己満足だった、本当になんの意味もない事だった。
だが、それでも
「お前が恨みに歳月は関係ないって言ってたんだからな」
「むしろ、俺は今も恨んでるよ。あんなんじゃ足らないくらい」
「そんなん、わかってた事だろ」
「それでもやはり、まだ信じたくないな。千夏がいないという、この現実を」
「報復したって、千夏が帰って来る訳じゃないって頭ではわかってても…やっぱり、ね」
「なんで、死んだの千夏。ほんと…有り得ないんだけど」
全てを受け入れ、それでも報復をすると決めた癖に今更になって泣き言を言い出す面々に、ゆっくりと目を瞑る。
本当にクソ面倒な死に方しやがって。勝手に知らねぇところで死んでんじゃねぇよ、このバカ女。
後悔はしない性分の俺に初めて後悔させてんじゃねぇよ。
もしもあの時、病院に付いて行ってればとか、電源が入ってない事にもっと不思議に思ってればとか…クソみたいな後悔しかなかった。
でも、今は謝らねぇからな。
そして柄にもなく買って来た花束を投げる様にして、供えた。なんで初めて買った花束を墓に供えなきゃならねぇんだよ、ほんとふざけんなブス。
「俺と花宮で買ったんだけど、一応それ千夏をイメージして作って貰ったんだよ」
「…あぁ、いい年して泣きそう」
「…やめろ、釣られる」
「やはり、どんなに時が経とうと千夏の事は忘れられそうにないな」
「忘れたら呪われそうだけどね。ほら、千夏だし」
「それは確かに」
「…おい、ブス。俺等の誰が1番にそっちに逝くかは知らねぇが、必ず説教してやるから忘れずに待ってろよ」
それまでグータラ暇してろ。
まぁ、俺等はやたら悪運は強いからな。当分先には、なりそうだが…待ってろよ。
そしてゆっくりと立ち上がり、もう2度と来ないであろう墓に向かって笑った。
その瞬間、強風が吹き花弁が舞い上がり… "さっさと行けバカ" と千夏に言われた気がした。
(って、夢見たんだけどさ!)
(は? 自惚れんなブス)
(ていうか、誰視点から見てるの?)
(死んだわたし視点じゃね?)
(俺が警察とか無理だろ)
(教師はさすがに嫌なんだが)
(そこの否定かよ!!)
(つーか、この間の引き摺ってんじゃねぇよブス)
(いつか正夢になったらどうするんだよ!)
(あ? 死ぬ気なのかよバァカ)
(わたし、ここまでバカじゃないから死なんな)
(まじで死ななそうだから笑う)※夢落ちにしないと辛かった
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