日常編 | ナノ
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△▼△▼△

あぁ、実に下らない。
だが、その絶望に満ちた顔は最高に傑作だ。

簡単に無罪判決で終わりを告げた裁判。
未来ある少年達には更生の余地があり、殺意もなく反省もしている。そんなクソみたいな理由と、ありもしないでっち上げられた情報のみで、こうも簡単に殺人犯は無罪となる。

どうだ? そっち側に立った気分は?
昔はお前がこっち側だったもんなァ?
クソみたいな法律に守られて、今までのうのうと生きて愉しかったか? だが、それもここまでだ。

判決の結果からなのか、俺の顔を見てなのか、その場で泣き崩れる男にもはや興味はない。

やっと、終わったんだからな。


△▼△▼△



「花宮ー、おっつかれ」

「あぁ。お前等もな」

「俺等って気付いた時の顔、凄かったよね」

「あー、俺も見たかったー。そんでざまぁみろって笑ってやりたかったんですけどー」

「そんな発言したら普通に叩き出されるぞ」



これで、やっと全て終わった。
俺等が成し遂げたかったこと。

自己満足でなんも意味もない事だとはわかっていた。多分、あいつもそんな事は望んでもいないし。むしろ、馬鹿なんじゃないのと罵倒するだろう。だが、それでも俺等は、この道を選んだ。

あの事件に関わった奴等は全員、絶望の地獄へ叩き落とす。

歳月を掛けただけあって、アイツ等全員を最高の結末で絶望へと導けた。もちろん、俺等はなんの罪にも問われない。特別俺等が手を下した訳じゃねぇし、そもそもバレなきゃ犯罪にはならねぇ。ただ、犯罪者予備軍の連中にその機会を与えて、知恵を貸してやっただけだ。



「…ほーんと、長かったよねぇ」

「つーか、古橋の観察眼がこえーよ」

「ふっ、人間観察が趣味ってだけで教師になれって言われたくらいだからな。役割りはきっちりこなすさ」

「時間は掛かったけど、概ね予定通りだったしねぇ〜」

「ふはっ、そう仕向けたんだよバァカ」

「よくやったよね。本当…」



後悔はしてない。
その為にここまで来たんだからな。

まずは、全員が目的の職に就く事から始まって…やっとそこからがスタートだった。犯人の名前は変わってるし、居所もわからないんじゃ話にならないからな。

まずは、探偵の原が情報収集をする。
初めの数年は原に頼りっぱなしだったな。

警察官と検察官のザキと健太郎は、まだまともに動けない状態だったしな。それに古橋も教師になったところで、すぐには役目を果たせるポジションじゃなかったし。

俺も大した事はしてねぇ。

そして、本格的に動き出す切っ掛けはザキと健太郎がある程度、自由に動ける様になってからだった。過去の事件の資料や情報を自由に見れるようになってからが、本番だった。

犯人の名前、居所など全ての情報を抜き出し持ち出した。それを更に原が細かく調べて現在の情報を集めて、奴等を見付け出した。順番は特に決まってなかったが、主犯格は最後と決めていた。

で、適当に古橋が目星を付けた不安定な生徒に原や俺がそいつ等が犯行に及ぶ様に仕向けた。ただそれだけ。裁判まで発展させる気はなかった。そこまで騒がれるとやりにくくなるからな。

もちろん、俺や原が足が着くようなヘマをする訳がないので犯行を起こした少年達は口を揃えて"わからない"と証言した。

で、最後は…そっくりそのまま、あの事件を、再現してやった。千夏の役は主犯格の嫁だが、役としてはピッタリだろ。ほぼほぼ関係ない奴が、自分の行いのせいで殺される。

だから、そのまま返してやったんだ。有難く思えよ? まぁ、泣いて喜んでくれたみたいで何よりだったがな。

…報復ってのは、そういうもんなんだろ?

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