日常編 | ナノ
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で、こうなると。
いやね? 確かに、興味本意で話を聞いたわたしが悪いけどさ、わたしがここまでする理由ありますかね?

まぁ、でも…今日は弘の誕生日だからね、仕方ない…と多少なりと優しくしてやろうって気持ちでなんか手伝おうか? とか言ったのが間違いだった。

ていうか、典型的な思い込み激しいやべぇ女じゃねぇか! 何がちょっと面倒臭い感じの女だよ! かなり面倒臭いじゃねぇか! しかも、既にわたしに敵意満々でお草がお生えになりますわ!



「……ねぇ、その子は誰? 今日は、私が一緒に帰って誕生日を祝ってあげるって言ったじゃない」

「…それは、朝断った筈だろ」

「私とは一緒に居れないのに、なんでその子はいいの? おかしいじゃない」

「いや、何度も言ってるけど俺…お前の事知らねぇし。助けて貰ったって言われても覚えてねぇから」



既に面倒臭い状況になっていますが、早いところ覚えていないが…かなり前に弘に助けられたという女がストーカー化してるらしい。で、どこから手に入れたのか今日が弘の誕生日と知った結果、助けてくれたお礼に私が祝ってあげると朝から付き纏われているらしいです。

つーか、メンタルつえーな、おい。普通に覚えてねぇとか言われてんのにめげなさ過ぎだろ。そもそも、祝ってあげるってなんだ。お前は何様なんだ。

で、1番手っ取り早いのがわたしが弘と一緒にいるのを見せて、諦めて貰うみたいな? いや、別にわたしは彼女のフリくらいならしてやってもいいって言ったんだけど、俺は全然いいけど千夏は後が大変だろって言われた。本当にいいやつ、やっぱり弘はいいやつ。



「そもそも、あなた誰なの? 弘くんのなに? まさか彼女とか言わないわよね?」

「…え、わたしは」

「…こいつは、俺の好きなヤツ。だから、お前の気持ちには答えらんないし…迷惑だからもう来ないでくれ」

「…はぁ? どうして? 彼女じゃないなら、私にだってチャンスくらいあるでしょ? 何がダメなの?」



う、うわぁ…。
本当に面倒臭い女で笑う。

ここまで言われても引き下がらないのは、ある意味尊敬する。ていうか、普通にわたしを好き発言に草生える。いや、彼女のフリよりも確かに面倒ではないけどさ。

そして女はキッとわたしを睨み付けると、何を思ったのか無理矢理に弘の腕を掴むと自分の胸に押し当てた。

…ぐぇ、痴女かよ。



「私にならなんでもしていいよ? 弘くんになら初めてもあげられるし、プレゼントもあるの」

「いっ、いや…」

「私、弘くんの為に頑張るから。好きになって貰える様になんでもするから、ね?」

「…いや、そういう事じゃなくて」

「こんな子より、私の方が弘くんを幸せに出来るもの。だから、一緒に」

「……黙れ、ドブス痴女。黙って聞いてれば、さっきからギャーギャーと喧しい。テメェ何様だよ、祝ってあげるとかしてあげてもいいとか、なんでテメェが上からなんだよ。迷惑だって言ってんだろ、耳付いてんのかよ、あ?」

「…いや、ちょ、えっ!?」



そして余りにも弘が可哀想で、思わずわたしがキレた。ていうか、本当に弘は甘いよね。

もっとガツンと言わないと絶対にこのての女は引かねぇぞ。むしろ、照れ隠しだとかなんとか言って都合のいいように解釈し出して、更に面倒な事になるぞ。

いやまぁ、今回はわたしが頭にキタのもあるけどな。

ちなみに周りには聞こえない程度の声量な上、めちゃくちゃ微笑みながら言ったよ。つまり、周りからはいつもの可愛い千夏ちゃんが何か言ってる程度の認識って訳だ。


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