日常編 | ナノ
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で、既に冷えているわたしが作った料理に手を伸ばし始める一哉を見つめながら、わたしはお茶を啜る。

はぁ…本当に面倒臭いヤツ。



「千夏って、人肌恋しくなったりしねぇの?」

「ないね。元から1人に慣れてたし。出来る事は、自分でどうにかしてたから」

「寂しいとかもねぇの?」

「…まぁ、小さい頃は全くなかった訳じゃないけど、寂しいって思っても言える相手はいなかったし。言ったところで痛い思いしかしなかったから、思うだけ無駄だなって」

「千夏って、実は自分の事クソ嫌いだよね」

「お前は自分の事好き過ぎだけどな」



一哉の問いに否定はしない。
というか、好きとか嫌いとか以前の問題だし。申し訳ないが、わりとマジで自分に興味がないだけだったりする。

まぁ、だからって死にたいとかは全然思ってないけどね。

なんか好きとか嫌いとか考えるのも面倒って言うか、なんと言うか…なんの意味があるのかわからないし。別に今を好きに生きてるだけでいいじゃん的な?



「ねぇ、ケーキないの?」

「ある訳ねぇだろ、しね」

「俺、誕生日なのに酷い!!」

「…チッ、うっせぇな! つーか、お前わたしのおめでとう無視しただろうが!」

「いやいや、あれは千夏であって千夏じゃないからノーカンでーす!」

「意味わかんねぇし。あっ、ドーナツならあったわ、はいローソクの変わりに楊枝刺してやったから火付けてやるよ」

「俺、こんな誕生日ケーキやだ」

「うるせぇ、ばか」



そして小さなドーナツに楊枝を突き刺した謎の食べ物を出してやった。ちなみに楊枝に火を付けたら予想通り臭くてすぐに消しました。

で、文句を言いながら無数の穴が空いたドーナツを食べる一哉に小さな紙袋を投げ渡す。

本当なら部活が終わったら渡す予定だったのに、クソがよぉ。ていうか、他の連中がいないとあんまり意味ないから2人の時に渡したくなかったって言うね。

ネタで買って来たのに、さっきの話を聞いた後だと…なんか嫌なんですけど。だけど、月曜日に渡すのはもっと面倒だし嫌なので渡しました。



「……え、なにこれ」

「可愛いウサギのヘアピン」

「さっきの話聞いてこれ渡す辺り、やっぱり千夏ってクソじゃね?」

「うるせぇな、要らねぇなら捨てればいいじゃん」

「まぁ、別に今更千夏達の視線とか気にしてないからいいけどさ。家では基本的前髪上げないし、これ千夏ん家専用で置いといてよ」

「普通に嫌なんですけど」

「別にいいじゃん、よく来るんだしさー。つーか、俺が前髪上げんの千夏達の前だけなんだし」



…いや、なんか前髪で目を隠してる理由はなんとなく察してたけど、いざ面と向かって理由を言われた後だとちょっとね。

そもそも、こいつ前髪上げたらマジでただのちょっと目付き悪いチャラチャラしたヤツだし。瞳の色が〜とか、怪我が〜とかじゃないんだよね。

まぁ、アレだよね。
自分を守ってるみたいなさ。
誰にも自分を見せたくないからって感じね。だからね、最初の内はわたし達にも全然見せなかったし、前髪上げなかったんだよね。

なのに今は、一哉が言ってる様にわたし達の前なら余裕で前髪ちょんまげにしたりするからね。本当にわたし達の事大好きだよな、お前。

で、最終的に今日は家に帰りたくないとか駄々を捏ね始めたので弘を呼び出して引き取ってもらった。もうマジで弘、良いヤツ。一哉は、マジで一生弘を大事にすべきだと思うよ。

ちなみにウサギのヘアピンは、持ち帰らせました。


月曜日、部活前
(ねぇ、花宮プレゼントはー?)
(ロッカーに入れといてやったぜ?)
(あ、俺と古橋のも一緒に入ってるよ)
(あ、本当っ…う、うわぁ、)
(ふはっ、嬉しそうで何よりだ)
(土チョコと消しゴムとガムって…)
(前に消しゴムなくなったって言ってたから)
(それ先週。もう新しいの買ったからね)
(そのガムが好きだと言っていただろ)
(…うん、そうだね。ありがと)
(真は誕生日プレゼントに毎回そのゴミチョコあげるのやめろや。クソ迷惑だからね)
(ホントソレ! 1番要らねぇ!)
(あ? 捨てたら殺す。全部食えよ)
土チョコ/ゴミチョコ(カカオ100%チョコ)
※実は色々と可哀想な原ちゃん(ハピバ!)

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