有能な生け贄 | ナノ
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とりあえず、一気に事が運び過ぎて話が纏まらないのでゆっくりと1つずつ整理していこう。



「まず、シロはわたし達に危害を加えるつもりはない。だけど、味方って訳じゃないんだよね?」

「おねぇちゃんの味方ではある。危害は、おねぇちゃん以外には加えないとは言えないけど…おねぇちゃんが悲しむから極力気を付けるよ」

「…ふんふん。次、離脱の儀式は行っても大丈夫なんだよね? わたしが死んだりとか、他の人が死んだりはしない?」

「離脱の儀式については、きちんと準備が出来ていれば大丈夫だよ。だけど、死にはしないけどおねぇちゃんは精神力をほぼ使い切るから…当分は動けなくなると思う」



つまり、離脱の儀式は1回限りって感じだよなぁ。そもそも、必要な物に余裕がある訳じゃないし、わたしの精神力もすぐには回復しないから無理だな。

となると、色々と準備をしてからじゃないと後が大変って事だよなぁ。わたしはまともに動けない訳だし、ある程度は地下で過ごせる様にしないといけないだろうし。

んー…、それで回復したらシロの呪いの解除をする訳でしょ? で、シロの呪いが解けるまでは脱出は不可能だから…マジで時間ヤバくね? 既に、化物は強くなって来てる訳だし。



「まだシロは、上の階にいる化物を倒せないんだよね?」

「…うん。ただ、ある程度なら足止めとかは出来るよ。それに、軽い強化魔術くらいならおねぇちゃん達に掛けられる」

「じゃあ、儀式に必要な物を簡単に探したりとか出来る? もしくは、出せたりとか」

「……んー、簡単な物は既におねぇちゃん達は見付けて持ち帰って来てるから…。探してない部屋を順番に見た方が早いと思う。あ、だけど…1階の部屋にはまだ入らないで」

「なるほど? で、その1階の部屋なんだけどさ。一体何があるの?」

「……何って言われたら、おねぇちゃん達が間違いなく死んじゃう様なモノがあるかな。まだ今の僕じゃ勝てない…」



ほ、ほぉん…? "まだ" ねぇ?
つまりは、いつかは勝てるって事でよろしいかね? っていうか、勝てないって事は何かが襲い掛かって来るって認識でいいのかな? 間違いなく死んじゃうって言ってるし。



「その部屋に儀式に必要なモノ、あるよね?」

「……うん。だから、僕の呪いを少しずつ解いてくれないと…儀式は出来ないかもしれない。もちろん、他の部屋にある可能性もあるけど…」

「んー…シロ的には、ない可能性の方が高い?」

「…多分。今まで何度も色々な "魔法石" を色んな部屋で見たけど…その "魔法石" だけは、あの部屋でしか見てない。僕、何度かあの部屋で死んでるんだけど… "アイツ" は、その "魔法石" を守る為に配置されてるんじゃないかなって」



あー…なるほど。
色々と突っ込みたいところはあるけど、つまり…まずはその部屋に行かなきゃならないって事だよなぁ。

で、そうなると…わたしがシロの呪いを解かなきゃならなくて…うわぁ、やる事はわかったけど時間は足りるのかねぇ、これ。



(お前は、こいつを信じてんだろ?)
(うん、まぁ…そうなるかな)
(なら勝手にしろ、止めねぇよ)
(えっ…花宮さん!?)
(元々、千夏の話しか聞かねぇからな)
(…なら任せた方がいいよね)
(健ちゃん、言ってる事と顔が合ってないよ)
(本当なら絶対に嫌だからね)
(僕は、おねぇちゃんがいてくれればいいし)
(じゃあ1つ約束してくれる?)
(…? なに?)

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