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やっと呼吸も落ち着いて来て、ゆっくりと扉の赤い魔法陣と "veritas" の文字を確認する。
魔法陣の色もそうだが、この部屋にあの廊下の異変についてなにかしらあるって事だ。
だが、この部屋が安全な保証もねぇ。さっさと必要なもんを見付けねぇと、最悪な事態になりかねねぇ。
「気になるもんがあったらすぐ声掛けろ。それと警戒は怠るな」
「わ、わかったのだよ」
「俺は本棚を調べる。お前は、机を調べろ」
…小さな本棚と机、ベッドのみの正直見飽きた内装の部屋だが…何処と無く違和感を感じるのは、なんだ?
廊下の様な嫌な感じではないが、何かが此処にあると言わんばかりの不思議な感覚に軽く頭が痛くなってくる。
チッ…直感的な勘はそこまで鋭い方じゃねぇんだよ、クソが。
色々と気になりはするが、仕方無く本棚から軽く調べていくと…真っ白なアルバムの様に分厚い本を見付けた。表紙には特に何も書いておらず、本の厚さに対して酷く軽い事に違和感を感じつつ、ゆっくりと本を開くとそこには桃紫色の宝石のネックレスがあった。
石に関しては、流石にそこまで詳しくねぇが…軽く石を撫でると不思議な感覚に襲われ、悪い物ではないと確信する。
「この本がベッドの枕下にあったのだよ」
「寄越せ」
「それと机の方には特に何もなかったのだよ」
「何もか?」
「あぁ、何1つなかったのだよ」
「わかった。周りの警戒しとけ」
なんでベッドなんか見てんだ? と思いつつ、机に何もなかったからと緑間が機転を利かせてベッド周りを探索していたのだとわかり、素直に感心した。
緑間から本を受け取り、手早く本を開き目を通すとそこには分かりやすく今の状況とその打開方法が記されていた。
はっ、閉じ込められたのが文字が読める上に魔術が使える俺で良かったってところか。
それにこの本から異様な圧を感じる辺り、恐らくこの本にも何かしら仕掛けがありそうだ。だが、今は一刻も早くこの場から脱出しなきゃならねぇ。
頭の中で呪文を繰り返し確認しつつ、桃紫色の宝石のネックレスを手に取り本は緑間に預けた。
「俺が部屋を出て呪文を唱える。お前は、ドアを開けたまま部屋の中で待機してろ」
「部屋を出たら攻撃をされるんでは?」
「死ななきゃいい。そんな長い呪文でもねぇ。ただ、お前や俺が孤立するのが不味い。だから、ドアは絶対に開けとけよ」
「花宮さんが怪我をするの良くないのだよ。魔術で援護させて貰うのだよ 」
「…チッ、無駄に使うなよ」
流石にバカじゃねぇな。
俺の言葉にゆっくりと緑間が頷いたのを確認してから、ドアを開けた。
※霧崎部屋にて
(…うおっ!? 急に起きてどうした!)
(…ん、なんか嫌な感じがした)
(千夏は猫かなにかか?)
(なんかピリピリする)
(…瀬戸はさっき帰って来たみてぇだけど)
(つまり花宮達に何かあったと?)
(いや、知らんけど…なんかざわざわする)
(ピリピリ、ざわざわって…)
(つーか、一哉は?)
(瀬戸んところに行ったけど)
(ちょっと様子見に行こうぜ)
(…いや、千夏は寝てろよ)
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