有能な生け贄 | ナノ
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…さすがに全ての物がどこにあるかまでは、把握してねぇか。必要な物がどこにあるかをシロに聞いたが、すまなそうな顔をするとわからないと答えた。

重要な部屋が1階にあるって話をシロと千夏がしてたってのは、実渕やザキから聞いたが…この口振り的に、1階の部屋には儀式に必要な物があるか、あるいは他に何かがあるって事だろう。

となると、時間が掛かるが…とりあえずはしらみ潰しで探すしかねぇか。



「おいシロ、どこが危険な部屋とかはわからねぇのか」

「……1階の部屋しかわからない、です」

「じゃあ、危険か安全かは入るまでわからないって事ッスよね。とりあえず、花宮さんに何かあると困るんで部屋に入るのは俺等からって感じッスかね」

「そうだな。それで大丈夫か? 花宮」

「それで大丈夫です。ただ、部屋には何かしらあるので中には入らずに、目視で安全確認が出来たら俺が入ります」

「ドアに書かれてる文字を確認するまでは、安全じゃないって事だよな」



さすがにこの面子だと説明をする手間が省けていい。それに物分かりがいいからな、時間を無駄にしなくて済む。その代わり、多少はメンタルの方に不安はあるが、まぁ…大丈夫だろう。

緑間も口は開かないが、理解はしている様なので特に俺から声を掛ける必要もない。

そして2階は健太郎達に任せているので、俺達はまだ1度も行っていない3階へと向かった。正直、全く情報がない状態で行きたくはなかったが…今は、そんな事を言ってる場合じゃねぇからな。

それに最悪は、一気に階段を下りて地下まで逃げればいい。まぁ、そう簡単に逃げられるとは思っちゃいねぇが。

3階の廊下に出て1番最初に感じたのは、異様な違和感。そして真冬の様に空気が冷たく、ヤケに静かだった。

静かだという事は化物がいない可能性が高いが、この雰囲気は普通ではない。それは、後ろにいる奴等も感じている様で表情を歪ませている。



「え、えぇ…なんか嫌な雰囲気っつーか…ピリピリしてるっつーか…ぶっちゃけ怖いんスけど」

「…花宮、どうする? 1度戻るか?」

「戻るにしても軽く様子は見ておいた方がいいのだよ。部屋の数や、構造の把握をだけするだけでも…今後の探索に役に立つはずなのだよ」

「では、高尾と福井さんはここでシロと待機。ですが、もし化物が現れたり何かあればすぐに地下へ戻って下さい。おい緑間、それで文句はねぇな?」

「別に問題はないのだよ。メモも持っている」

「えぇっ…真ちゃん無理してんじゃねぇの?」

「お前は余計な物を見付けそうだから来ない方がいいのだよ。それに少し気になる事があるのだよ」



正直、高尾が怖気付くのは予想外だったが…よく考えればこいつも無駄に勘がいい部類の奴だったな。千夏、原やザキがここにいたとしたら、やめた方がいいとか言い出しそうだな。

だが、緑間の言う事もわかる。
さすがに危険だからと何も確認せずに帰る訳にもいかねぇ。それどころか、今の内に少しでも探索を進めねぇと化物の関係でまともに3階にすら来れなく可能性があるからな。

まぁ、多少緑間に不安はあるが…前回の時よりはまともに動ける自信があるんだろう。

そして3人を置いて、緑間とゆっくりと3階への廊下へと向かった。

…少しでもいい、あいつの助かる可能性があるなら多少なりと危険でも行くしかねぇ。


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