有能な生け贄 | ナノ
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それにそもそも、その離脱の儀式をするのも簡単じゃないからね。なんか色々と必要になるみたいだし。だから正直な話、その儀式をする前にわたしが死んで、他に脱出の方法がなかった場合は真が死ぬんだよね。

いや、真の事だから "誰がテメェ等の為に犠牲になるかバァカ" とか言いそうだけど。



「どうせ俺が止めてもやるんだろ、テメェは」

「むしろ、止めるとか自殺行為じゃん。死ぬ気なんですか、あなたは」

「…チッ、ほんと可愛くねぇ女」

「頭の悪い奴等は、他の脱出方法を探そうとか言い出しそうだけどな。ま、そんな余裕も時間もないと思うけど」

「…化物の入れ替わりが思ったより速いみてぇだからな。まともに探索が出来なくなる前に儀式に必要な物を集めるしかねぇ」

「それに無理に脱出しても、また連れ戻されたら意味ないし。だから "離脱" の儀式なんでしょ」



で、わたしと実渕がへろへろになった理由として、前より化物に魔術が効かなくなったからだ。拘束に関しては、精神力の消費は激しいくせに1人だと確実に動きを止める事が出来なくなってたし。吹き飛ばす魔術も前よりも吹き飛ばし力が弱くなってて、化物の復帰が早かった。

まーじでかなり状況が悪いんだよね。その上、魔術をまともに使えるかわからない連中もいる訳だし。下手に探索に行かせられないし、魔術を使える連中を探索に行かせまくれば精神力が尽きるし。

もうね、このままだとジワジワとなぶり殺される未来しか見えないんだよねぇ。



「正直、真と健ちゃんには待機してて欲しいけど言語的な意味で無理だからなぁ」

「それはお前もだろ。ま、今はまともに歩く事さえも出来なさそうだけどな」

「前より他の連中が協力的なのは、有り難いけど…キモい上に役に立たなくてあんまり意味がねぇんだよなぁ」

「ふはっ、最初から期待なんてしてねぇだろ。とりあえず、テメェは寝てろ」

「言われなくても寝るわ」



座ってるせいで真を見上げてたら首が痛くなったわ、クソが。

とりあえず、真がまともな判断力を取り戻した様で安心した。これで、 "他の方法を探す" とか言い出したらどうしようかと思ったけど、ちゃんと呪いが解けてる様でよかったぜ。

ちなみに健ちゃんは、普通に嫌そうな顔してわたしに嫌味を言ってくるよ、絶対。まぁ、でも健ちゃんも嫌がるだけで止めはしないだろうけど。

一哉達は、まぁ…うん。
アレだよね、お前いいならいいんじゃん? みたいな。特に一哉と康次郎は間違いなく、反対もしなければ賛成もしないかな…今は。弘は、止めはしないけど…内心は止めたいって思ってそうな感じ。

そして真は、壁に寄り掛かるわたしを一瞥してから部屋から出て行った。


※廊下にて
(相変わらずで草草の草)
(…ほんと、自己犠牲精神強過ぎない?)
(…今更じゃね?)
(ふっ…花宮は、千夏に愛されてるな)
(しね、古橋お前はほんとしね)
(まぁ、千夏が嫌がんなきゃいいっしょ)
(前よりダメージ無さそうだしな)
(前のは本当に可哀想だったからね)
(で、お前等3人はこの部屋にいろ)
(はいよん)(おう)(わかった)
(騒いで起こすなよ)

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