05*(2/4)
そして、俺の合図で部屋から出て行く3人を見送り…化物の這いずる音に耳を澄ませる。
速度は徘徊時の倍以上だな。
だが、これなら追い付かれる事なくあいつ等は地下室に戻れるだろう。
化物の這いずる音が部屋の前を通り過ぎ、少し遠ざかったのを確認して素早くと静かにドアを開けて目的の部屋へと向かう。
……パッと見、ドアに特に変わったところはないので静かに部屋に入ると、異様な匂いに思わず腕で顔を隠す様にして鼻を押さえる。
ドアを確認すると " invisibilia " の文字を見た瞬間、すぐに部屋から出た。
部屋を出ると既にこちらに戻って来ようとしている化物が目に入り、急いで元の部屋に戻る。
…チッ、そういう事かよ。
見えない何かがいる部屋と、その部屋に執着する化物。
とりあえず、このままじゃあの部屋の探索は出来ねぇな。まぁ、この情報があるだけでもマシか。
俺があの部屋に入ったせいなのか、化物がなかなか徘徊をし始めず…無駄に時間が過ぎていく。まぁ、焦ったところで何も意味はないからな。
それよりも、 " 見えない " って事は可視化の魔術でどうにかしろって事だろうが…見ていいものなのか、見ない方がいいものなのかがわからない。
もちろん、情報が欲しい身としては見たいが…魔術が関係してるってなると、嫌な予感しかしねぇ。それに、不可視な時点で普通じゃねぇし。
悲惨な死体くらいなら構わねぇが、精神ぶっ壊れるくらいの何かを見せられるってなったら堪ったもんじゃねぇ。
そもそも、人間は日常的に防衛機制が働くが…それが続いたり、処理が出来ない程のショックを受けると精神崩壊を起こす。で、ここは前の異世界とは違って現実だ。
つまり、都合良く回復する薬もなければ完全に安全な場所もない。
……とりあえずは、保留だな。魔導書や日記を解読している千夏達の話を聞いてからでも遅くはない。
そもそも、他の脱出方法がわかればあの部屋を探索するかしないか…判断は出来るしな。まぁ、出来る事ならこのまま放置でもいい気はするが。
だが、それよりもあの化物がこれから増えるって事の方が問題だしな。時間経過で追加召喚されるらしいが、まずはあの化物をどうにかしねぇ限りは…思うように探索は出来そうにねぇからな。
そんな事を考えつつ、やっと動き出した化物の這いずる音を聞きながら、すぐに部屋から出れる様に集中した。
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