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部屋に入り、体を休めたいのは山々だが…仕方なくソファーへ向かう。そんな俺の後を付いてくるシロは、少しだけベッドに視線を向けると不思議そうな顔をした。
「なんでおねぇちゃんと一緒に寝たのになにもしてないの?」
「…あ?」
「あっ、ごめんね。ただ人間って、本当に面倒臭い生き物なんだなぁって思って」
「その面倒臭い生き物に興味津々なのは、何処の誰だよ」
「うん、僕だね。それで、キミはおねぇちゃんのなんなの? 恋人でもなければ、お友達でもないよね」
「さぁ? 別になんでもねぇんじゃねぇの」
本当に面倒臭いのは、オマエの方なんじゃねぇの? 俺等がオマエと千夏が仲が良い事にイラついてるのはまだわかるが、オマエが俺等に嫉妬するのはおかしいんじゃねぇの。
そもそも、オマエはいつになるかは知らねぇが最終的に千夏が手に入るんだから、そんな顔をされる筋合いはない。
あのバカに執着しているとは思っていたが、まさかここまで執着してるとは思っていなかった。
「ふはっ、あのバカに振り回され過ぎて嫌にでもなったか?」
「……気に入らない」
「どんなにあいつを縛り付け様と、オマエが俺等と並ぶ事はねぇよ」
「それが気に入らない。なんでキミ達は、おねぇちゃんの事をなんでも知ってるみたいに振る舞えるの? おねぇちゃんの口から聞いた訳でもないのに」
「さぁな? 口に出さなくてもわかるもんはわかるし、わかんねぇもんはわかんねぇ。ただそれだけだが?」
「俺の事も全く信用してない癖に?」
「そもそも、俺は誰1人として信用なんてしてねぇが?」
「………」
なるほど、ずっと感じていた違和感はこれだったのか。
最初が幼女の姿だったせいで、変に落ち着いたガキってイメージだったが…本来の姿になった事で逆にガキっぽさが露見したな。
それなりに年を重ねてはいそうな言動もあったが故に、人間に慣れてない訳では無さそうだが…となると、
「ふはっ、本当に人間の女1人に振り回されてんならお笑い草だなァ?」
「………」
「いくらでも好きに出来るだけの力があるのに、面倒臭い生き物だなァ?」
「…オマエ、嫌いだ」
「奇遇だな、俺もテメェが嫌いだ」
「おねぇちゃんがいなかったら今すぐ殺してるくらいには嫌いだよ」
「そりゃあ残念だったな」
ニコリと冷めた笑みを浮かべるシロから確かな殺意を感じつつ、俺もとびきりの笑みを返してやった。
どっちにしろ、オマエが千夏に執着してる内は俺等は安全なんだろ? 殺したい人間も殺せねぇで、可哀想になァ。 簡単に人間と約束なんてするもんじゃねぇなァ?
先に俺等を始末してから、あの手この手で千夏を縛り付けるのが正解だったな。
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