有能な生け贄 | ナノ
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そりゃあ、こうなるよね。
ピリピリとした空気の中、わたしと一哉とシロは飛び出すタイミングを図っている。

正直なところ、今の一哉と一緒にとか絶対に嫌なんだけど…まぁ、うん…確かに1番合わせやすいし、行動も読みやすいからね、仕方ないね。まぁ、本当の事を言うと康次郎に言いくるめられただけなんだけどさ。

ていうか、わたしを囮にしないって話はどうしたんだよ! あっさりと囮にしやがって! なんなんだよ、お前ら!!!



「先にシロが飛び出せよ。俺と千夏は、様子で後を追う感じね」

「わかった。おねぇちゃん、下手に前に出ないでね? 今の僕だと助けられない可能性もあるから」

「とりあえず、シロ目掛けて化け物が向かって来たら3人で逃げる方向で。全くこっちに寄って来ない場合は、魔術で煽る感じね」

「おねぇちゃんは、絶対に魔術使っちゃダメだからね」

「千夏は、周りの警戒と化け物の行動パターンとかの分析でもしてて。余計な事したらぶっ飛ばすから」



そしてわたしの意見なんて聞く気のない2人である。
いや、まぁ…その場合だとわたしが1番の足手まといですし? ムカつくけど素直に2人の指示に従ってやろう。それに今のわたしが魔術を使ったら、それこそ動けなくなって最悪な事態になり兼ねん。

そしてなんのタイミングを図ってたのかは不明だが、一哉の合図でシロが化け物の前へと飛び出す。その瞬間、化け物がゆっくりとこちらを向き見定める様にシロを見つめるとけたたましい咆哮と共に向かって来た。

で、シロに敵意満々の割には息がピッタリの様でアイコンタクトで逃げる方向を示すと一哉がわたしの腕を掴んで走り出す。

いやいやいや! 引っ張らんでいいから! 流石のわたしでもこの明るさで転んだりしないから!! ていうか、お前の足が速過ぎて逆に転ぶんだが!?

とかふざけた事を思ってたら、後ろを走っていたシロが何やら魔術を使ったらしくゾクリとした空気が走った。



「後ろからもう1体来たよ。少し足止めするから、2人は先に奥に走って」

「は? 早くね?」

「近くに居たんだと思う。すぐに階段降りなくて正解だったね。それと、後ろの使い魔の方が足が遅いから共食いになるまで少し掛かると思う」

「ふーん? 逃げ回ってればいい感じ?」



流石にシロが冷静なのはわかるけど、お前はもう少し驚いたりしろよ。化け物に対してリアクション薄過ぎだろ。



(部屋には入らないでね)
(ん、おっけー)
(ちょ、シロを1人にすんなって!)
(流石に死にそうになったら逃げてくるでしょ)
(おねぇちゃん、大丈夫だから行ってて)
(……絶対に追い付いて来てよ)
(うん、わかった!)
(はいはい、千夏はこっちね〜)
(お前はもう少し躊躇しろ!)
(別に人間じゃないし、大丈夫っしょ)
※どこまでもシロに冷たい原ちゃん

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