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体育館にいる全員がステージに集まってる訳で、健太郎が状況を理解していないはずがない。
呼びに行くのも怠い。
ジッと健太郎の方を見れば、すぐに気付き頭を傾げたのでコクりと頷くと、ゆっくりと千夏を起こしている様ですぐに来るだろうと、再度パネルに視線を戻した。
あの女に反応しないって事は、千夏がキーの可能性が高いな。つまり、俺等にとって悪い情報ではないはず。そもそも、誠凛がこの辺りを調べてたってだけで怪しいからな。
なんて考えてたら、何故か周りがざわつき始めてパッと振り返ると…あぁ、と納得した。
「うっわぁ…こういう時に限ってあれの日とかまじうける」
「これは千夏に惚れる奴が出ると予想」
「…いや、それはねぇんじゃね?」
「おい、健太郎」
「いや、そんな顔されても…自発的に起きてないから仕方なくない?」
「チッ…おい、千夏」
健太郎が千夏を連れて来たのは、いい。だが、健太郎にピッタリとくっ付いている千夏に頭を抱えた。
そして健太郎に抱えられたまま、ピッタリとくっ付いている千夏の頭を軽く叩くが嫌そうに唸るだけだ。
はぁ…クソ面倒くせぇ。
とりあえず、健太郎に任せるとしてすぐにパネルに触れる様に説明するとゆっくりと、千夏を抱えたままパネルの前に座った。
新手の筋トレかよ。
「…千夏、ちょっとでいいから起きてこれ触って」
「……んん〜っ…やだ」
「すぐだから、ほら」
「…うぅ〜…健ちゃん」
「はいはい、終わったら寝ていいから」
「……わかった、やるよ〜」
まぁ、知ってた。
健太郎と千夏のやり取りに目を見開く面々に、溜め息を吐きながら千夏がパネルに触れるのを見る。
そしてのそのそと健太郎に抱えられながら、腕を伸ばし"これ?"と少し不機嫌そうに頭を傾げる千夏に健太郎が頷くとぶすーっとした顔をしながら、ゆっくりとパネルに触れた。
とりあえず、千夏の事は無視してパネルが反応した様でパネルには"解除完了"の文字が浮かび、何が起こるかわからないので身構える。
その間にも千夏は、健太郎に引っ付いて寝る体制に入っている。
「…うぅっ〜…もういいの?」
「うん、もう寝ていいよ」
「…ん〜っ…ん、健ちゃーん」
「はいはい」
色々と千夏の様子に突っ込みたい奴等も、さすがに壁が動き出したらそっちを見るしかない。
物々しい音と共に演台の後ろ側の壁に、隠し扉が現れゆっくりと開いた。
…いや、どんなギミックだよ。原が"うわぁーうける"とか感情をまるで感じられない声色で呟いているが、誰も突っ込む気が起きないらしい。
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