さよならと嗤う | ナノ
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赤司達、探索班が帰って来たのは…わたし達が暇過ぎてマネキン以外に襲って来そうな物をリストアップしてる時だった。

そして扉を開けて入って来て…1番に目に入ったのは、康次郎に寄り掛かる様にして支えられてる弘だった。

……あぁ、なるほど。
あんた、まじで許さないから。

遠くからでもわかった。
わたしと目が合ったそいつは、至極不満そうに顔を歪めたが…すぐに弘を見て笑った。そして心配する様なふりをして弘に触れていた。

バッと立ち上がり、走って扉に向かう。



「……触んな。康次郎、弘お疲れ様。手当てするからこっち」

「あぁ…すまない。それより、目が覚めたんだな…よかった」

「…な、ほんとによかったぜ」

「……、今はそれよりも手当てすんぞ! おら、こっちじゃ!!」

「いたっ! うぉい、千夏!! もっと優しくっ…いってぇなおい!!」



許さない、絶対に許さない。

早くあの女から離れたくて、痛がる弘を無視して強引に腕を引いて霧崎スペースへ連れて行く。

なんか、高尾の"元気過ぎっしょ"とか言う笑いを堪えた声が聞こえた気がしたが…今は無視だ。高尾、あとで殴るからな。

そして早く報告しに来い。



「うっわぁ…いったそー。えいっ!」

「いっ…! 原ァァ!!」

「全体の報告は赤司が、今吉さんと真にしてるからいいとして。弘は、なんで怪我したの?」

「………」
「………」

「はーい! 千夏ちゃん勘が良いからわかっちゃいましたー。千夏ちゃんブチギレ案件でーす」

「…ま、大体予想は出来るよね。姫野の事、庇った感じ?」



弘と康次郎の手当てをしながら、何があったのかを聞けばバツが悪そうに目を反らす2人になんとなくわかった。

そして詳しく話を聞くと、案の定でした。

ゾンビと対峙中にあの女が"危ないです!"とかなんとか言って弘の前に飛び出て来たらしく、咄嗟に庇っちゃったらしいよ。

まんまと嵌められてんじゃねぇよ! やっぱり弘は、うちらの良心だから甘いんだァァ! これが一哉とか真なら容赦なく盾にすると言うのに!

もちろん、わたしはそのまま前に蹴ってゾンビにぶつけますよ。死ねっつって。どうせ、ゾンビに攻撃されねぇだろうし。



「はい、ばかー。まじでばかー」

「もう弘はあの女と探索すんの禁止な。で、康次郎は?」

「俺は、赤司を死守しろって花宮に言われていたから盾になっただけだ」

「忠犬かよ! で、収穫は?」

「うむ、赤司的にはかなりいい収穫だったみたいだぞ」

「つまり、弘だけ敵に塩送ったと。ま、生きてたから許すけど」

「…それ千夏には言われたくねぇんだけど。つか、体の方は大丈夫なのかよ」

「大丈夫大丈夫、むしろ前よりピンピンしてるよ!」



わたしの言葉に心底安心したって顔をする弘に、ちょっとだけ察した。

…あぁ、そっかそっか。
これは弘を責められませんなぁ。ていうか、8割くらいわたしが悪い説。

多分、探索に出た時にまだわたしが目を覚ましてなかったのもあるし、わたしが怪我してたから…余計に咄嗟に体が動いた的な。

真に赤司を死守しろって言われてたのもあるし、怪我させられねぇみたいに思ってたんだろうね。

やっぱり弘は、真面目で優しい良い奴だよな。たまにクズだけど。


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