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チッ…そういうタイプかよ。
作戦通りに千夏達が囮役をやってるお陰か、千夏達より後に体育館を出た俺達はゾンビに遭遇する事はなく、目的の職員室に着いた。ま、体育館から近いからってのもあるが。
で、そこで手に入れたノートの切れ端の内容を見た瞬間、自然と舌打ちをした。
「チッ…真実が知りたけりゃ続きを手に入れろって事かよ」
「…これは、どうする? ますます、千夏に疑いが掛かりそうだが」
「赤司がいる時点で隠しようがねぇよ。ま、さすがに全員には言わねぇだろうがな」
「なになにー? なんかあったの?」
「あ? いいからテメェは、適当に探してろ。メモでもなんでもいいから見付けろ」
「んな事言ってもさぁ〜。あ、これは? なんか"返して"って書いてあるけど」
職員室に入ってすぐに見付けた箱には鍵が付いていて、すぐにゾンビからドロップした鍵を使うんだとわかった。
ブレーカーを探しに行った赤司を待ってもよかったが、どうせ見せる事になるだろうと鍵を開けた。そして箱の中には、2枚の紙と鍵が入っていた。
《×月○日
あぁ…欲しい。どうしても欲しい。あの子が欲しい。だから、頼んで頼んで頼んで…やっと貰えた遺伝子。先輩と彼女との最高傑作。僕もあの子が欲しい、だから僕が造る事にしたんだ。》
《×月○日
僕の可愛い子が出来た。あの子みたいに育つように一生懸命愛してあげた。だけど、やっぱりあの子には敵わない。あの子が欲しい、欲しい、欲しい。あの子に会わせてくれない先輩と彼女は邪魔だから消えて貰った。これで、僕もあの子を造れる。きっと、これで僕の子もあの子に成れる。》
…チッ、嫌な予感はこれか。
ゾンビが寄って来てんのは、血の匂いなんかじゃねぇのかもしれねぇな。
千夏は自分の過去を話したりするタイプじゃねぇし、俺も興味もねぇし、そもそも聞いた事もねぇ。
だが、いつだか…今吉さんが話してたはずだ。興味本意で一人暮らしの理由を聞いた時に言われたって。
"両親は遺伝子研究員で、小さい頃に事故で死んでる"
つまり、このノートの主は千夏が欲しくて千夏のクローンを造ったって事になる。
…で、あの女がそのクローンって事か。
「…花宮、赤司達が帰って来た。どうする?」
「いい、そのまま渡せ」
「無事に電気はつきましたが、何かあったんですか?」
「ふはっ、悪い知らせだ」
「?……これは、どういう」
「さぁな。それとどっかの鍵だ」
「…とりあえず、体育館へ戻りましょう。志波さんに話を聞きましょう」
赤司の表情が一気に曇り、それに実渕と根武谷が気付き声を掛けているが、どうやらまだ話す気もノートの切れ端を見せる気もないらしい。
まぁ、赤司の中では千夏が"あの子"だと確信を持てる情報は持ってねぇしな。
それでも安易に紙を見せないのはさすがだな。なんたって、千夏が事実を話さなきゃ…誰だって"あの子"になり得るからな…逆も然り。
自覚がねぇクローンが紛れてて、実はあの女はブラフなんて事もあるかもしれねぇしなぁ?
さて、どう転ぶか。
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