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あぁ…無理だ、これ、無理。
カタカタと震える自分の体に鞭を打ち、床に転がる白いナイフを拾うがすぐに手から滑り落ちて床に落ちた。
……うっ、やだ。
バッと立ち上がり、床に落ちた白いナイフもそのままに医務室を飛び出して…見慣れた背中に飛び付く。
「……っ、む、り…」
「でも殺ったんだな?」
「………っ」
「いやぁ、1人目でこれって…無理っしょ。それこそ、千夏が死にそう」
「…っ、やだ…む、り」
「…無理でも殺らなきゃ出れねぇんだよ。落ち着いたら、殺るぞ」
「…え、花宮がまじで鬼なんだけど。いや、確かに脱出出来ないのは困るけどさ」
まじで…む、り。
あの肉に刺さる感触も、痛みに耐える声も…あぁ、もうやだ、聞きたくない。
真の背中にしがみつき、柄にもなく " 嫌だ無理 " と呟くわたしにいつもの様に一哉も茶化す事が出来ず、わたしの背中を撫でている。
さっきまで話してたのに、さっきまで目の前にいたのに…なんでそんな相手をナイフで刺さなくちゃいけないんだよ。なんで殺さなきゃならないの。
「はぁ…おい、千夏」
「………」
「お前は、赤司を殺したんじゃなくて助けたんだよ」
「……っ」
「どうせ血も死体も残ってねぇんだろ? なら、赤司は1番にこの世界から脱出したって事だ」
「で、もっ…」
「でもじゃねぇ。お前しか俺等をここから救い出せねぇんだよ、わかってんのかバァカ」
真の言ってる事は正しいし合ってる。
赤司からは血も出なかったし、死体も消えた。だから、わたしが殺したっていう証拠も何も残ってはいない。
だけど、わたしの手には赤司を刺した感覚がまだ残ってて…ギュッと真のシャツを握る。それに痛みに耐える声とか目の前で倒れる姿とか、わたしの中ではまだ生々しく赤司を殺したシーンが頭を過る。
こんなん、何人も出来ない。
正直、もうやりたくない。
「じゃあよ、俺等が手伝えばいいんじゃねぇの?」
「ま、そうなるよねん」
「そうだね。最初から千夏には無理ばっかりさせてるしね」
「千夏、大丈夫だ。俺等がどうにかする」
「はぁ…お前等も文句ねぇな。こいつに殺さるのには変わりはねぇが…俺等がフォローする関係で1対1はなしだ」
そもそも、殺すのを手伝うってなんだしと、シャツを掴んだまま黙る。
そんなわたしに真が乱暴にわたしの頭を撫でると、強引にわたしの腕を引き医務室へと連れていった。
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