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静か過ぎる廊下を走り、階段を上って…図書室に着いた。すぐにドアに手を掛けて、ゆっくりと慎重にドアを押すとそこはあっさりと開いた。
物音はしない、ゾンビやクローンの気配もしない。
ゆっくりと中を覗き、見える範囲の安全を確認して中に入る。俺と原、健太郎とザキが中で必要な物を探し、入り口には氷室と紫原が待機する事になっている。ドアが閉まらない様にするのも氷室と紫原の仕事だ。
ま、すぐにドアストッパーの代わりに本を差し込んでる辺り、大丈夫そうか。
「花宮、他に情報は? 表紙とか」
「ねぇよ。だから、勘で探せ。自分が大事なもん隠すならどこに隠すか、よく考えて探せ」
「あぁ…なるほど。 なら、花宮はそっちからお願い」
「原とザキは余計なもんには触れずに近くにいろよ。無駄なギミックの相手してる暇ねぇ」
「りょーかい」
「わかってるって」
重要な情報がある場所を特定しただけで充分だ。
頭ん中でどんなもんを見せられてたのかは知らねぇが、それでもその中から情報になり得る物をちゃんと俺等に伝えただけで大したもんだよ、お前は。
廃校だっていうのに異常なくらい綺麗に整頓されている本棚に、高速で目を通しながら…必死に頭を働かせる。
あの研究員が隠す物。
間違いなくクローンについての情報だ。あいつの能力なのか、はたまた製造方法なのか…まぁ、なんにしろ俺等に必要な情報があるはずだ。
…千夏のクローン。
安直に遺伝子関係の棚を探すのもいいが、ない可能性が高い。俺なら絶対に隠さない。
なんでもいい、千夏について関わりがあるもの。千夏にあって、クローンにないもの…なにか、なにかないか。
クローンは図書室に近付けられないらしいが…万が一、クローンが図書室に入れる様になった時の事を考えて…多分、クローンが思い付かない様な場所に隠しているはずだ。
「原、千夏にあってクローンにないもの…なんかあるか」
「またざっくりだねー」
「多分、体の構造は人間と同じだろ。髪や腕、脚もそのはずだ」
「そもそも、俺等は本体知らないじゃん? まぁ、でも千夏に似てるんでしょ?」
「らしいな。別になんでもいい、思い付くものあるか?」
「んー…すっげぇ的外れかもしんないけど、クローンには母親はいなくね? 千夏には死んでるけど、一応いた訳だし」
……母親。
確かに、クローンにとって親は研究員だけだろう。現にクローンのメモには " お父さん " しか出て来てねぇ。
母親に関する本?
…育児とかそういう感じか?
とりあえず、まずはそっちを探してみるか。
そして原と一緒に教育関係の棚に来て、何かないかと探していると原が何かを手に取った。
「花宮、これっぽい。Vって書いてあるけど」
「なら、次だ。図鑑がある棚に行く」
「なんで図鑑?」
「人間性を失ったら、動物的って言うだろ」
「あ、そっち。心とかじゃないんだ? さすが人一倍ひねくれてるだけある」
「うるせぇ。そこになかったら次はそっちだ」
さすがに " 心 " は安直過ぎるだろ。
まぁ、一応心理学や遺伝子関係の棚も見るつもりだが。
そして原には本を持っててもらい、図鑑の棚へと向かう。
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