さよならと嗤う | ナノ
33*(1/4)

っ、あぁ…クソ。そういうタイプの攻撃かよ。痛む左腕に意識も朦朧とする中、頭の中に響くあのクソ女の声と制御が出来なくなって来た左腕。

この黒いナイフ、抜いとけば…よかったかな。これ、軽く乗っ取られてない?

うっ…く、手榴弾…1つくらい持っとけばよかったな。

もう後ろから迫ってくるクソ女の相手をしている余裕もなくて、暴れ出しそうな左腕を掴んで必死に走る。気を緩めると首に向かって行こうとする自分の左腕が酷く恐ろしく感じる。

決して早くはないけど、ズリズリ足をと引き摺る様に追い掛けて来るクソ女は、なにかブツブツと言っているが聞き取れない。



「千夏!!」

「か、ずや」

「っ…なんで怪我してんだよ。バカかよ、まだ走れんの?」

「ん、大丈夫」

「で、あの化物がクソ女な訳? つーか、もう原型ねぇじゃん。なんで動いてんの…まじで死ねよ」

「…知るかよ。でも、多分…意味ないと思う」

「は? つーか、俺が後ろ付くから前だけ見て走れって!」



思ったより早く一哉が来てくれてちょっと安心した。多分、大丈夫…あの速度だし、仮にゾンビを湧かせたとしても一哉がどうにかしてくれるはず。

ギリギリと動き出そうとする左腕に爪を立てながら、必死に走る。

あぁ…頭がいたい。
人の頭の中でキャンキャン喚くなクソ女。はっ…誰が、殺すかよ。わたしが殺すのは、お前だっつーの、早く死ね。

頭の中で必死にクソ女の声と戦いながら、自分の腕を制御していると…前方から真と弘が走って来るのが見えた。

その瞬間、弘が何かを投げて来て…ちょっと笑いそうになった。ちょっとわたしに向けて投げてるみたいじゃん、わたしを殺す気でもあんのかよ。

そしてわたしを軽く飛び越えて爆発したのは、もちろん手榴弾だ。音がうるさ過ぎて耳が痛いし、なんか一哉がキレてるけど…ナイスでーす。



「ザキィ! もっかい! 手榴弾投げて!!」

「あ? おう! 花宮、早く千夏連れてってくれ!!」

「…チッ、背負うから早くしろ」

「…だ、め。それしたら制御出来ない」

「あ? 後ろにナイフが刺さってんだから、抱えらんねぇだろうが!」

「真のこと、殺しちゃうかも…今、わたしの左腕…いうこと利かないんだよね」



わたしの言葉に一瞬、全員の動きが止まって…真が盛大な舌打ちをすると無理矢理、わたしを抱えた。

ナイフが刺激されて腕に激痛が走るが、真はそのまま走り出す。脇に腕をいれて、極力ナイフに触れない様にして…わたしが自分の腕を掴んでいるのも邪魔しない様にしてくれている。

これ、絶対に重いよね。
真の腕もげない? 大丈夫?
真の体に寄れないから、外側に体重掛かってるし。

だけど、そんな事を考える余裕もなく…わたしの左腕が真に向かっていこうとして、必死に押さえ付けた。

…誰が殺らせるか、クソが。

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