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いつの間にか寝ていたみたいで、目を覚ますと目の前には今吉さんがいた。
頭がボーッとする。
吐き気は大分治まったけど、なんか全部どうでもいいと思えるくらいにボーッとする。
…今まで何をしてたんだっけ。
「千夏、大丈夫か?」
「はい」
「でな、悪いんやけど…脇腹の傷見せて貰えへんか?」
「いいですよ」
「うわぁ…無表情。千夏さん、俺の事わかりますー?」
「高尾」
「あ、そこはわかるんスね」
今吉さんと高尾が心配そうにわたしを見ているが、何がそんなに心配なのかがわからない。吐き気も治まったし、頭もぐるぐるはしてない。
ただボーッとするだけ。
きっと疲れただけ。
そして今吉さんに言われて、ゆっくりとYシャツを捲り脇腹を見せると今吉さんの顔が酷く歪んだ。
……???
よくわからないけど、そのままYシャツを捲ったまま動かずにいると、今度は高尾が乾いた笑いを漏らした。
「ははっ…あぁ、なるほど? 怪我をすればする程ってやつッスね。蓄積系?」
「……千夏、少し触るで。ここ、痛いか?」
「痛くない、です」
「…そうか。次は、肩を見せてくれ」
「わかりました」
「うわぁ…無表情でなんの躊躇もなく脱がれると罪悪感というか、なんかこっちが辛いッスわ…」
「ここ、痛いか?」
「痛くないです」
よくわからないけど、今吉さんの問いにはしっかり答えられたと思う。今吉さんが触れた場所に痛みはないし、何も感じない。
触られてるなぁって感じ。
そしてわたしの言葉にゆっくりとYシャツを戻してくれる今吉さんは、酷く辛そうな顔をしていた…気がする。
よくわからないけど、そんな気がした。
「千夏、自分が誰かはわかっとるな?」
「……た、ぶん」
「…花宮達もわかるな?」
「……え、と…わたしが」
「ちゃう。千夏は、関係あらへん」
「……わたしが何かした気が、します」
「いや…もうまじで思考ぐちゃぐちゃッスね。今吉さん、やめときましょ」
「……せやな」
…わからない。
わたしは、多分…しちゃいけない事をした気がする。
ジッと自分の手を見つめると、段々と視界が赤く染まっていき手が真っ赤に染まった。
あっ…あ、ちがっ…
何かを拒否する様にカタカタと自分の体が震えるのがわかる。だけど、真っ赤に染まった自分の手から目を反らせなくて…息の仕方を忘れたのか息も出来なくて苦しい。
「っ!! 千夏、見なくていい。なんも見えへん、大丈夫や」
「わた、し…手が」
「大丈夫ッスよー。千夏さんの手にはなーんもなってないッスから、ほら俺の手わかります?」
「…わ、かる」
「……花宮、はよ帰って来い」
「…次寝たら終わりッスよね。多分、まともに反応すらしなくなるッスよ」
バッとわたしの目を覆う今吉さんの手と、震える手を握る高尾は酷く辛そうな声でわたしに話し掛け続けた。
あっ…またねむく、なってきた。
何も感じない、何も考えられない。
ボーッとする意識の中で、何故か酷く胸が痛んだ気がした。
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