さよならと嗤う | ナノ
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あぁ、クッソ…ふざけんな。
やっとの思いでゾンビを全滅させた結果が、黒いメモと小さな鍵。

チッ…今は全く関係ねぇ。

異常な速さで分裂する女ゾンビと異常な固さで全然死なねぇ男ゾンビの2体。こいつ等が恋人同士だったとか、そんなクソみてぇな事はどうでもいいんだよ。

グシャリと乱暴に黒いメモと小さな鍵をポケットにしまい、古橋の方を向く。



「まだ動けるか?」

「あぁ…さすがに少し疲れたが、怪我も大したものじゃない」

「2人で動くぞ。またあの数であの固さの奴が来たら、面倒だからな」

「あぁ、わかった」

「2年の教室は最後だが、聞こえると思うが…間違いなく何かがいる」

「…だろうな、すぐ撃てる様にしておく」



あの大量のゾンビを相手にしている時は、全く聞こえなかった物音。いくらに銃声がしてたからといって、全く聞こえない訳がない。

この異常な粉砕音と咀嚼音。

開けたくないと思う反面、ここに薬があればすぐに戻れるという期待もあった。

だが、ドアを開けてみれば…どう見たって良くない者だとわかる。ゾンビではなく、ゾンビより遥かに大きい化物。

俺等に背を向けていた真っ黒な化物は、俺等に気付いたのかゆっくりと振り向いた。その瞬間、頭目掛けて銃を撃つがまるで効いている様子がない。

こいつ…ゾンビを喰ってやがる。

例えるなら、全身が闇に覆われている…大男。そして、雄叫びの様な不快な声を出しながらゆっくりとこちらに迫ってくるそいつ向かって再度発砲する。

すぐに古橋も続けて発砲するが、多少の怯む程度で化物は止まらない。



「…チッ、一旦引くぞ。あいつがなんなのかわからねぇ以上、下手に攻撃されて…千夏と同じになったら元も子もねぇ」

「だが、追ってくるんじゃないのか?」

「試しだ、手榴弾でぶっ飛ばすか」

「花宮らしくない提案だが、手っ取り早く始末したい。あんな化物に構ってる暇はないからな」

「ふはっ、そうだな。じゃあ階段前まで引き付けて、手榴弾を投げたら階段で身を隠す」

「あぁ、了解した」



そうだったな。
手段は選ばねぇ。
邪魔をするなら殺すまでだ。

古橋と教室を飛び出し、階段前まで走る。後ろからは、不快な雄叫びをあげながらズルズルと何かを引き摺る様に俺等を追ってくる化物。

…ゾンビ、ではねぇよな?
あいつの体でよく見えなかったが…確かに、あいつはゾンビを咀嚼してた。そもそも、ゾンビを喰うってなんだよ。

クローンもそうだが、喰えば何にでもなれるとか思ってんのか? なら、手榴弾でも喰って爆発しとけよ。

階段前で立ち止まり、ギリギリまで引き付けてから古橋と合図を送り、手榴弾のピンを抜いて…化物へ投げた。


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