さよならと嗤う | ナノ
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千夏がいない事にすぐに気付いた原と古橋は、すぐに俺の後を付いて来た。

2階…だと?
それと、青峰と黄瀬は千夏の元に向かったのか…それとも別にどこかに向かったのか。

いや、それはこの際どうでもいい。とりあえず、今は2階に急いで向かうしかねぇ。

そして階段をかけ上がると青峰と黄瀬の声が聞こえて来て、更に走るスピードを上げた。



「黄瀬ェ! さっさと連れてけ!!」

「っ、わかってるッスよ!!」

「……っ、はっ…大丈夫だから」

「…原、古橋!!」

「わかってるよん」
「あぁ、任せてくれ」

「チッ…おい、そいつ貸せ。テメェが先行しろ」

「っ…は、はいッス」



どう見ても大丈夫そうではないバカ女に舌打ちをしつつ、体を支えている黄瀬から千夏を受け取り軽く頭を叩く。

ハッキリと意識はある様だが、反撃する元気は無さそうで…面倒くせぇな。

仕方なく千夏を抱えると、女とは思えない声を出す千夏を睨む。黙ってろ、このバカ女。

パッと見、怪我は大した事は無さそうに見えるが…まだよくわからねぇからな。つーか、なんだそのTシャツ。お前、Yシャツどうしたんだよ。



「おいブス、暴れたら落とすからな」

「……うっざ、早く運べよ」

「いい度胸じゃねぇか、舌噛んでも知らねぇからな」

「っ…はいはい」

「おい、行くぞ。お前等も適当に逃げて来い、わかったな」

「ん、りょーかいっ…と!!」
「あぁ、わかった」
「…へいへい」



そして大人しく抱えられている千夏に違和感を感じながらも、黄瀬の後を走って付いて行った。

後ろから何故か、原の笑い声が聞こえた気がしたが…まぁ、あいつの事だろうから古橋のゾンビの殺し方が凄かったとか…物凄くどうでもいい事だろう。


…つーか、だからこいつを探索に行かせるのは嫌だっつったんだよ。頭の回転が速いせいで、誰が残れば生き残れるかをすぐに導き出しちまう。それに赤司が死ぬのは、こちらにとってかなりの痛手になる。で、赤司を確実に守るには囮になるしかなかったと。

ま、だからと言ってこいつも死ぬ気はなかっただろうが。両手の手のひらが血で滲んでいて、壊れるまでバットを振り回してたんだろうと安易に想像出来るしな。



「花宮さーん!! 千夏さんは!?」

「えっ、…高尾くん!?」

「生きてるが、体力がギリギリで歩くのも覚束ねぇな」

「……うっせぇ、クソ眉毛」

「ぎゃはっ! こんな状況でも毒吐けるとか、さすが千夏さん!!」

「高尾は、赤司の指示か?」

「そんなとこッス。黄瀬くんは、ちょっと頼りないっつーか? ま、この距離なんで大丈夫だと思うッスけど俺が先頭でゾンビがいたら殺るんで」



…さすがに頭が冷えたか、ここで高尾を指名するとはいい判断だ。

そして高尾の軽い嫌味に顔を歪める黄瀬だったが、事実だから反論しようがない。そもそも、お前は千夏を疑ってた側だろうしな。



(あ、あのっ…!!)
(…あ? んだよ)
(ぎゃは! 花宮さんこっわ!!)
(……すんません、俺)
(謝罪とか要らねぇんだよ)
(ぶふっ…黄瀬くん、そんなじゃ霧崎の人達には伝わらないよー)
(高尾は、黙ってろ)
(はい、さーせん)
(……もう少し真剣に考えてみるッス)
(クソみてぇな話なら聞かねぇからな)
(わ、わかってるッス…)
(花宮さんまじツンデレ)
(…高尾、黙れ殺すぞ)
(ぎゃはは、ひゃー怖い!)

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