さよならと嗤う | ナノ
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バタバタとわたし達の走る足音だけが廊下に響く。いちいち、教室を確認する様な余裕はないので自分達の耳と目が頼りだ。

そして廊下を走っていると、すぐに壁に打撃痕があるのを見付けた。

はい、ビンゴー。

多分、紫原が持ってるバットによる打撃痕だろう。つまりは、ここでゾンビか何かと交戦したと。

で、ここにいないとなると…逃げるしかなかったか、全滅させたか。いや、前者だな。全滅させたなら、わたし達のいる場所を知ってるんだし戻って来るはずだし。

ていうか、わたし達が赤いゾンビと対峙してる時に更に違うゾンビが来たって事? わたし達が前方しか見てなかったから? いや、それにしてもどっから湧いて…いや、あいつならどこからでもゾンビを湧かせられる可能性あるしな。

チッ…赤司から離れたのは、失敗だったな。



「…あの、いいッスか?」

「あ? なんだよ」

「なんで…赤司っち達が危ないってわかるんスか? もちろん、愛ちゃんがいて動きにくいのはわかるッスけど」

「……説明すんのクッソだりぃ」

「あんた、姫野の事を疑ってんだろ? それに赤司も姫野の疑ってる、そうだろ」

「お前、バカなのに勘だけは鋭いな」



いや、別に隠してた訳じゃないし。むしろ、わたしの態度を見ればわかりそうなもんなんだよなぁ。それを気付かないのは、周りを見てないから。

霧崎だからとか、女の癖にゾンビと戦ってるからとか、そんな事ばっかりに囚われてるから気付かない。

逆にあの女についてもそう。
小さく可愛いから、性格も良いから、だから大丈夫だって勝手に思い込んでるだけ。あの女について、なーんも知らない癖にな。



「…なんで、愛ちゃんなんスか?」

「あぁ…だから、面倒くせぇから説明はしない。ま、赤司達に合流すればわかるよ」

「だから、何がッスか?」

「赤司達が危ない中、あいつだけが無傷だったりしたら面白いよね?」

「……っ! それって」

「俺等ですら無傷は無理だったんだから、そうだったらおかしいのは確かだな」

「ま、わたしの言葉は信じなくていいから。とりあえず、赤司は自分が危険なのをわかってたって事だけは教えてやるよ」



別にお前達にあの女を疑えとは言わない。だけど、少しは警戒をする様にって意味で助言をしてやった。

ていうか、お前等は赤司と紫原を心配してればいいんじゃねぇの? ま、お前達の仲がどんなもんか知らないけど。

とりあえず、わたしはあの女が気に入らないからって理由だからね。別に赤司と紫原が死んでも仕方ないと思えるくらいには、クズだからね。コラテラルダメージだよコラテラルダメージ。むしろ、赤司と紫原が死んだらあいつに疑いが掛かるし?

いや、"あの2人が命掛けで私を逃がしてくれたんです…"とかふざけた事ぬかしそうだな。

はぁ、まぁいいや。
…ま、本当に死なれたら気分悪いからね。出来る限りは、使われてやるよ。



(わざと…愛ちゃんとって事ッスか?)
(まぁ、そんなところ)
(紫原はなんなんだよ?)
(あいつは、わたしが殺され掛けたの見てるから)
(…だけど、愛ちゃんが)
(だから、別にお前がそう思うならそれでいいっつってんだろ!)
(お前、自分はクローンじゃねぇとか言わねぇの?)
(言ったところで意味ねぇだろ)
(ま、確かにな。でも信用は出来そうだな)
(え、しなくていいから)
(まじで可愛くねぇ女だな)
(は? 知ってるけど)

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