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うん、雰囲気でわかる。
あれは、まじでキレてる。
そしてわたしの前まで来ると、なんの躊躇もなくわたしの頭を引っ叩いた。
クソ痛いんだけど、こいつ手加減ってもんを知らない訳? あれ〜? もっと優しくしなくていいのかな〜? 我、怪我人ぞ? 死に掛けた怪我人ぞ?
「っ…イッタァ!!」
「は? 知るかよ」
「キレ過ぎだろ」
「何、油断してんの? バカなんじゃないのまじで」
「……てへ、心配した?」
「…千夏」
「いや…はい、ごめんなさい」
ちょっと場を和ませ様とウインクまでしたが、マジギレの一哉に全く効果はなかった様だ。むしろ、逆効果だったらしく…健ちゃんがやめろと言わんばかりにわたしの名前を呼んだ。
はい、ごめんなさい。
ちゃんと素直に謝りますよ。
だって、こんなにキレてる一哉を見たのはかなり久し振りだし。ていうか、わたしが悪いのは重々承知してますし? むしろ、一哉達には助けて貰ったし。正直、感謝しかないですよ。
「なに、俺に殺され掛けてんの」
「は? なんで知ってんの」
「福井から聞いた。なんかマネキンを俺だと思って話してたっぽいって」
「そう聞くと、わたしが頭おかしいみたいだからやめてくんない?」
「え、頭おかしいのは通常運転じゃん」
「健ちゃんはまじで黙ってて」
ふぅん…やっぱりそうだったのかぁ。わたしには一哉に見えてたけど、みんなには普通にマネキンに見えたらしい。
で、なんか一哉がわたしを殺そうとしてるとかなんとか…まぁ色々言われたっぽい。それは、まぁ…申し訳ない事をした。
ていうか、わたしがまともに確認せずに勝手に一哉だと思い込んだのが悪いからね。一言、"廊下にいたんじゃないの?"くらい聞けばよかった。
「勝手に死ぬとかまじで許さないから」
「肝に命じておきます」
「ていうか、俺の事が好きすぎて俺に見えたんじゃないの? キモくてキレそう」
「既にキレてる上に、それはねぇから安心しろ自意識過剰」
「ていうか、元気過ぎかよ。なんなの? 不死身かよ」
「いやぁ、なんか健ちゃんと一哉の顔見たら、死んでらんねぇなってなった…凄くね?」
さすがにそれは自意識過剰でキモいんで消えて下さい。確かに、嫌いじゃないけど…絶対にねぇから。
んで、健ちゃんと一哉の顔を見たらなんか苛々して来た訳だよ。理由は、1つ…あの女まじで許さねぇ…っていう怒りである。絶対にわたしが殺してやるからな、お前なんかに殺られてたまるか。
それに…霞む視界の中で見た、あの一哉と康次郎の顔はもう見たくない。またあんな顔を見るくらいなら、意地でも死なない。
「……お前さぁ、ほんとさー」
「まぁまぁ、寝起きだから」
「って事で、心配掛けてごめんね?」
「は? 許さねぇって言ってんじゃん」
「キレ過ぎな上に、わたしの事大好きかよ」
「…は? なにふざけた事ぬかしてんの? 犯すよ」
「キレ方がクズ過ぎて草も生えない」
いや、ほんと…まじでキレ過ぎ。
わたしの頬を撫でる様に触ると、にっこりと笑う一哉がまじで怖いんだが。さすがのわたしもこれには恐怖した。
(あ、花宮が気付いた)
(え、真いるの?)
(めっちゃ良い笑顔でこっち見てるよ)
(なにそれキモいし、怖い)
(…ねぇ、千夏)
(なんだし)
(体どこも痛くないの?)
(え、すっげぇ痛いよ)
(は? なんで言わねぇの? バカなんじゃねぇの)
(は? またキレんのかよ)
(まじで可愛くないんだけどー)
(は? わたし顔は可愛いし)
(え? 今、普通に不細工だけど)
(健ちゃんまじ許さねぇ…)
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