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…はっ? まじで意味わかんないだけど。
俺が千夏の首絞めて殺そうとしたって言いたい訳? なにそのクソ面白くない冗談。頭ん中ババロアどころか、何も入ってねぇーんじゃねぇの?
余りのイラつきに力任せに壁を殴るとザキが心配そうに俺を見上げた。なんだよ、ザキも俺がやったと思ってんの?
身に覚えがないどころか、俺が行った時には既に死にそうな顔して、殺されそうになってる千夏がいたっつーの。
まじ心臓が止まるかと思ったからね。
いっつも女とは思えないくらい手は早いし、性格もクソ悪いし、可愛げなんてあった試しがない。だけど、そんな千夏が虚ろな目で涙流して、殺され掛けてて…本気で焦ったし。
「原」
「…なに」
「本当は言うつもりなかったけどさ、俺等は原が千夏の事を殺そうとしたとか思ってないから」
「は?」
「いつもみたいにヘラヘラ笑ってるならまだしも、こんな余裕ない原を見たら嫌でもわかるし」
「仮にお前が無意識に何かしたんだとしたら、俺等が全力で潰してやるさ。だから、安心しろ」
「つーか、なんだかんだ千夏の事が心配で一緒に行くって言ってたんお前じゃん。なのに、なにそんな弱気になってんの? 原クゥン…どうちたのー?」
……ザキ殺す。
すっげぇイラッとする顔で煽ってくるザキの脇腹を容赦なく蹴る。
まじでムカつく。
てーか、千夏を心配してんのは俺だけじゃねぇじゃん。つーか、口に出さないだけでお前等だって心配しまくってんじゃん。てか、心配とかじゃねぇしまじでザキ死ね。
ギャーギャーと脇腹を押さえながら煩いザキを壁に突き飛ばして、ゆっくりと千夏の近くに座る。
「はぁ…ちょーむかつく」
「それは確かに」
「なに勝手に殺されそうになってんの」
「なお、犯人は原マネキンだった模様」
「お願いだから古橋空気読んで」
「すまない」
「てーか、起きたら絶対許してやんないからまじで」
もうね、ほんとムカつく。
千夏の癖にふざけてるよね。いつもみたいに毒吐いて、ゲラゲラ笑ってればそれでいいのにさぁ。
ていうか、まじでクローンのやつ許さないから。勝手に俺の姿を借りた上に、千夏を殺そうとするとかまじ死刑。
そもそも、千夏もなに油断してんの。俺だから安心してたとかだったら、まじでバカ。ほんとバカ。
「…いつもは死ねだのクソだの容赦なく暴言を吐くが、それでも千夏は俺等を信用してくれている。だからそこ、俺は許せない」
「うん。それでもなく千夏は周りから疑われてて、怪我だってしてるのに探索までしてさ」
「でも千夏が素直に助けてとか、弱音吐かねぇのは知ってるし。だから、俺等もそれに応えなきゃじゃん?」
「つまり、千夏を疑うやつはみんな敵って事で…おっけー?」
俺等が千夏を守ってやるとか、そんな気持ち悪い事とか絶対に言わないし言いたくもない。
だから、俺等が勝手にそうするだけ。俺等が気に入らないから、ぶっ壊してやるよって話。
イイコちゃん達の上っ面の下らない仲良しごっこと同じにされちゃ癪だからね。
無駄な言葉は不要…つまりそういうこと。
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