さよならと嗤う | ナノ
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とりあえず、こいつ等の話だけじゃ状況がわからねぇ。千夏を健太郎とザキに任せて、原と古橋を連れて赤司の元へ向かう。

まだ報告中みてぇだからな。



「志波さんの様子は、どうですか?」

「さぁな。で、千夏と一緒にいたのはあんただよな? 何があったか話して貰うぜ」

「…お、おう。志波、紫原、古橋と一緒に準備室の安全を確かめてから、志波と一緒に中に入ったんだよ」

「それは俺も確認している」
「うん〜。俺も見てたよ〜」

「で、俺が奥の机を調べてて…志波がドア近くの棚を調べてたんだよ。特に会話もなくて黙々と何かないかと探してた」



福井は、少しバツが悪そうにポツリポツリと話し出す。多分、こいつが千夏に何かをした可能性は極めて低い。

そもそも、原や古橋が一緒にいなくても…千夏自身が警戒をしてたはずだからな。あぁ見えてあいつは警戒心が強い。だから、簡単にこいつに気を許してはいなかったはずだ。

だから、尚更おかしい。それにゾンビとも散々戦ってる千夏があっさり背後を取られるとも思えねぇ。それに家庭科室には、古橋と紫原がいたんだからな。



「それで…暫くしたら志波の声が聞こえて来て、最初は独り言かと思って気にしてなかったんだよ」

「内容は」

「ちゃん聞いてねぇからわかんねぇけど、だけどそのすぐ後に志波が"一哉"って呼んだのが聞こえて…」

「…は? あんた何言ってんの」
「黙ってろ原。続けてくれ」

「…それで原が来たのかと思って志波の方を見たら、志波がマネキンと話してたっつーか…それで咄嗟に志波を呼んだ瞬間にマネキンが志波を襲った…って感じだ」



隣で拳を握り締めて、すぐにでも福井に食って掛かりそうな原に大人しくしろと目で訴える。

へぇ…なるほど。
相手さんもよく頭が回るようで、まさかそんな手で千夏を殺そうとするとはな。敵ながら称賛してやるよ。

つまり、どういう原理か知らねぇが千夏には、そのマネキンが原に見えてたって事か。ふはっ、そりゃあ簡単に上を取られる訳だ。さすがの千夏も原に警戒はしねぇはずだしな。



「…はっ、意味わかんないんだけど。俺が千夏の事を殺そうとしたって言いたい訳?」

「…いや、俺にはマネキンにしか見えなかったけど。そもそも、お前は氷室といただろ」

「あぁ、確かに原くんは僕と一緒にいたよ。ずっとゾンビの相手をしてたから」

「だから〜、あの子にだけ違う風に見えてたんじゃないの? よくわかんないけど、マネキンが動き出したらさすがに叫ぶなり逃げるなりするでしょ?」

「…それが原だと言いたいのか」

「だって、そうじゃん。現に福ちんが聞いてんだから」

「…とりあえず、この件に関しては志波さんが目を覚ますのを待ちましょう」



原が疑われてる事に古橋が静かに怒っている様だが、まぁ…疑われるのは仕方がねぇからな。今更、俺はフォローはしてやらねぇぞ。

だが、赤司が空気を読むように話を強制終了させると、原と古橋はすぐに千夏の元へと戻っていった。

そして緊急事態と言うことで、探索チームの今吉さん達を呼び戻す事になり…俺と葉山と根武谷が駆り出された。

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