さよならと嗤う | ナノ
01*(1/4)


…頭が痛い、体も痛い。

そして、なによりも不快。


「…っ、なに?」

「あ、起きた。おはよーん、千夏」

「は? 一哉? は? なんで?」

「ん〜、それがよくわからないんだよねん」

「は?」



ガクガクと揺すぶられて、余りの不快さに目を開ければ、目の前には見慣れた一哉の顔があった。

いや、それはおかしい。
だってわたし、ベッドでスマホゲームやってた筈だし。そもそも、仮にゲーム中に寝落ちしたとして一哉がここにいるのは絶対におかしい。

とりあえず、よくわからないが体を起こして周りを見渡すと、更におかしい。



「…ここ、どこ?」

「知らなーい。なんか気が付いたらここにいた感じ? んで、千夏が転がってたから起こした。今ここ」

「誰かのイタズラ? だったら殺す」

「イタズラにしてもこんなところで放置とか、そんなつまんないイタズラお断りなんだけど」

「ていうか、一哉はここに来る前に何してたかと覚えてんの?」



わたしの言葉に"うーん"と考え出す一哉に、目に見える限りの情報を頭に叩き込む。

薄暗くて確信はないけど、多分ここは教室。荒れに荒れまくってるが、机や椅子がある上に黒板や教壇もある。

時計は、秒針が動いてないので恐らく止まってる。午前なのか午後なのかは不明だが、時刻は2時25分。



「ん〜確か、ザキん家で遊んでて、3時くらいに眠くなって適当に雑魚寝してたはず」

「ふーん」

「ちょ、興味ないなら聞かないでよ」

「いやだってさ、一緒にいたはずの弘がいないって変じゃね?」

「って事は、ザキが犯人?」

「一哉の場合はそうかもしんないけど、わたしは無理でしょ。そもそも、弘がそんな器用な事を出来る訳がない」

「確かに」



とりあえず、ここに居ても何もわからないので仕方なく立ち上がると、一哉が不思議そうな顔をしてわたしを見下ろしていた。

ていうか、薄暗いのに相変わらず一哉の髪色はよくわかる。なんていうか、いい目印になりそうですね。

そんな事を思っていると、突然誰かの叫び声が聞こえて思わず足が止まった。



「今の聞こえた?」

「うん、バッチリ」

「はぁ? マジでなんなの。ふざけてんの…」

「とりあえず、見に行ってみる?」

「…嫌な予感しかしないんだけど」

「でもここに居ても埒明かないっしょ。ま、千夏が1人でいたいならいてもいいけど」

「女の子をこんな場所に置いてくとかクズかな?」

「え? 女の子とかどこにいんの?」

「しね」



まぁ、初めからこの教室から出ようとしてたからいいんだけどね。

そしてこんな時でも、いつも通り過ぎる一哉の肩を軽く殴ってから、勢いよく教室のドアを開けた。


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