さよならと嗤う | ナノ
08*(3/4)


なんて思ってたら、普通にこっちに向かってくる高尾に一哉がゲラゲラと笑い出す。



「もーう千夏さんたら、そんな熱い視線向けてどうしたんスか?」

「ぶふっ…高尾まじうける」

「失せろ帰れ」

「ぎゃは! 辛辣ぅ! いやぁ、なんかますますおかしいなーって思って、千夏さん達はどう思ってんのかなーって」

「どうもこうも、最初から変わらないよねん。そもそも、俺等に信用とかそういうのないし?」

「みんな敵、はい終了」

「雑! ちょー雑ぅ!!」



お前は本当に楽しそうだな。ゲラゲラと笑いながら、嬉しそうに話す高尾に毒気を抜かれてしまう。なんなの、お前は霧崎の解毒薬かなにかになりたい訳? あ、でもうちには解毒出来ない劇薬いるから無理だった。

そもそも、高尾も毒側だった。あれか、混ざって逆に毒を中和する的な。

それにしても…、周りからの視線はわたしへの疑念でいっぱいって感じでうける。まぁ、活躍しちゃったからね? 仕方ないよね。

わたしってば、お前等みたいに無能じゃないからさぁ! ごめんねぇ!?



「で、姫野さんと誠凜に軽く探り入れたんスけどー。またこれが疑問だらけで」

「仕事はえーな、有能かよ」
「うむ、役に立つみたいだな」

「あざーす! で、誠凜の奴等は姫野さんを全く知らなかったらしいッスよ。まぁ、交流がなかったら仕方ないとは思うんスけど。顔も名前も知らなかったみたいで」

「生徒数多いから、全く知らない場合もあるにはあるよね」

「で、姫野さんにはゾンビについて聞いたんスけど。なーんか、ゾンビにも男女がいるみたいとか言ってて、"私が会ったのは女ゾンビで動きがちょっと遅かったから逃げられた"とかなんとか」

「は? 女ゾンビも殺意MAXで足速かったよね。ていうか、そんな確認する余裕あるとか凄いなー驚きだなー」



もう怪しいを通り越す勢いで、もはや突っ込むのもバカらしくなって来た。

まぁ、誠凜の連中があの女を知らないのはまだいいとしよう。だけど、全く関係ないのになんでここにいる訳? あからさまにあの女だけ変だよね。実は女子バスケ部とか、元マネージャーとかならまだしもさ。

で、ゾンビに性別があるのを知ってると。わたしが怪我した時とか、焦ってたのもあるけど薄暗くてそこまで確認してないんだけど。なんとなく髪が短いとか長いくらいしか、見てないし。まぁ、電気がついてからはかなり判断しやすくなったけど。

しかもあいつ、3階の1ーEで目を覚ましたって言ってたらしいけど。体育館から1番遠い上に無傷とかおかし過ぎてうける。どんだけ余裕でゾンビ観察してたんだよ。



「で、なーんか千夏さんに執着してるっぽくて。"私も志波さんと仲良くしたいんだけど、嫌われてるのかなぁ…"とか言いながら上目で見つめられました!」

「…吐きそう」

「ぶふっ、ちょ…高尾強過ぎない? 俺ならドン引きするんだけど」

「つーか、ハッキリ言って人間喰ってゾンビにしてんの姫野さんじゃないッスか。で、理由はわかんないッスけど、千夏さんを狙ってる…みたいな?」

「逆に千夏が化物で、姫野さんをわざと連れて来て罪を被せようとしてる可能性とかは?」

「健ちゃんまじファック」

「…んー、正直千夏さんが化物だったら絶望的ッスかね。あんだけ強くて頭いいとか、適当に言いくるめられて順番にみんな喰われてって終わりじゃないッスか?」



そしてこの短時間でわたしの有能さに気付く高尾は、やっぱり侮れないよね。

しかも、あの女が化物だと思ってるわりには完全にわたしを信用してない辺りがマジで有能。しかもクローン関係の事を知らないのにも関わらず、この考察力。

かなり有能だな。しかも性格悪くてコミュ力高いとか最高かよ。最高の駒かよ。


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