さよならと嗤う | ナノ
07*(4/4)


千夏達が体育館に戻って来たのは健太郎が報告を終えて、暫くて経ってからだった。

まるで遊びから帰って来ましたと言わんばかりの連中に、周りが痛い程の疑いの視線を送っていたが、それを苦にせずゲラゲラと笑いながら戻って来た4人に心底笑えた。



「ぎゃはは! まじで千夏さんキレ過ぎ!!」

「うっせんだよ、高尾ォ!」

「ぶふっ、八つ当たりしないで下さいよ!」

「まぁ、二刀流は流石に笑うよね。1人で無双してたし」

「頭に2本刺しは引いた」

「お前等が笑って倒さねぇからだろ、しね」

「あ、花宮ただいまー」

「もう少し静かに帰って来れねぇのかよ、てめぇ等は」



4人を見る限り疲労はしてるものの、目立って怪我をしている様子もなくピンピンしてやがった。

そして何故か、ハサミを両手に持ちチョキチョキと見せ付けて来る原を無視して、千夏の方を見ると不機嫌そうに俺を睨んで来た。

なに睨んでだ、このブス。



「クソ疲れたし、腕悪化したし、まじでキレそう」

「さっき既にキレてたじゃないッスか!」

「で、俺等の渾身の探索結果どうだった?」

「緑間が使えなくてまじクソだった」

「ちょ、やめてあげて下さいよ! あれでも真ちゃん頑張ったんスから!」

「とりあえず、てめぇ等は黙ってろ」



ギャイギャイと千夏が文句を垂れて、それに高尾が律儀に反応してるせいで話が進まねぇ。

それにしても、本当にこのブスバカなんじゃねぇの。

うっすら血が滲んでいる包帯に自然と眉間にシワが寄る。そもそも、まともな手当てしてねぇのに暴れてんじゃねぇよ。わざわざ、原とザキをそっちにした意味がねぇじゃねぇか。



「あ、そうそう。ザキが口滑らせて"喰われる"って高尾と緑間の前で言っちゃったんだよねー」

「あ? それなら緑間から聞いた。それにそこのそいつに関しては、あの女が怪しいって薄々感付いてたんじゃねぇの」

「えっ? バレてました? つーか、普通に考えたら1番怪しいのは姫野さんしかいないじゃないっスか」

「それがわからないのが、頭ん中ババロアが詰まった奴等なんだってー」

「ま、俺等の先輩も姫野さんよりも千夏さんや霧崎の奴等の仕業なんじゃねぇか、って疑ってますけど」

「はい、ババロアー」
「まじでババロアー」

「ぎゃはは! ババロアババロア言い過ぎ!!」



…つーか、普通に馴染んでじゃねぇよ。こいつ、ただのイイコちゃんかと思ったら…案外こっち側か?

視る目はあるみてぇだし。原もザキも、完全に気を許した訳じゃねぇみたいだが…それでも、使える、利用出来る奴だからって感じか。

まぁ、手駒は多い方がいいに越した事ねぇ。精々、いいように使わせてもらうぜ。



「おい、高尾」

「へ、なんスか?」

「あの女から情報聞き出して来い。てめぇなら誠凜のバカ共も警戒しねぇだろ」

「はい、真に目を付けられたー。高尾アウトー」

「御愁傷様でーす」
「ドンマイ」

「ぶふっ、ちょっと千夏さん達! まぁ別にいいッスけど。どこまで話していいんスか?」

「お前等はゾンビと戦ってただけって言っときゃあいい。事実、その通り…だろ?」

「ぶふ、まぁ確かに。おっけーでっす! じゃあ、タイミング見計らって適当に行っときます」



こいつ、もちろんタダでとは言わないですよね? みてぇな顔しやがって…手軽な手駒には留まりそうにねぇ奴だな。

だが、その根性は嫌いじゃねぇな。使われてやるけど、俺もあんたを利用するからよろしくみたいな顔しやがって。

ま、今の段階で千夏が黒幕の可能性は低いと考えてるみてぇだから…別にいいか。

そして、後でまとめて情報は話してやると伝えるとあざーすと軽く笑う高尾に、さっさと戻れとアゴで指すとゲラゲラと笑い出した。

こっちは、千夏を連れて赤司と今吉さんのところに行かなきゃなんねぇんだよ。



(てか、花宮に認められるとか高尾うける)
(え? あざーす、光栄でーす)
(ゲスの仲間入りおめでとう!)
(ちょ、なんでッスか!)
(ゲスクズ天下一の真に認められるって事は、高尾もゲスでクズ)
(つーか、お前絶対性格悪いじゃん)
(酷い! ま、否定はしないッスけど!)
(否定しねぇのかよ…)
(ザキより高尾の方がゲス度高いのうける)
(弘は霧崎の唯一の良心だから。クズだけど良心だから!)
(嬉しくねぇ…)
(つーか、早くしろブス)
(は? わたしがブスだったら全国の女子はどうすんだよ、しね)
(ぎゃはは! マジうける!)

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