さよならと嗤う | ナノ
07*(3/4)


◇◆◇◆◇

見取り図を描き終わって、赤司と古橋とどこがなんの教室かを記憶を頼りに描き足している時だった、



「っ、…おら、さっさと入れ!!」

「い、痛いのだよ!!」

「じゃ、健ちゃん後はよろ! 全滅させて来るから!」

「千夏なら、俺のハサミもいるでしょ?」

「…流石健ちゃん、よくわかったね! ありがと! 二刀流で瞬殺してくる! …健ちゃん、まじで許さないから」



ガタガタと騒がしく体育館の扉が開いたかと思ったら、緑間が凄い勢いでスッ転んで入ってきた。

姿は見えねぇが千夏と健太郎の会話が聞こえて、その後すぐに健太郎が体育館に入って来て扉を閉めた。

ふはっ、つーか無傷かよ。



「うむ、帰って来たみたいだな」

「えぇ、無事みたいですね」

「ふはっ、怪我人が1番に帰って来ない辺り流石だな」



そしてざわめく周囲に目もくれず、緑間を引っ掴んでスタスタと歩いてくる健太郎に思わず笑いそうになった。健太郎…お前、随分と楽なボジションを勝ち取ったみてぇだな。



「ただいま。これ、武器ね」

「ハサミ…ですか」

「開かない部屋が多かったのと、ゾンビ多過ぎてほぼゾンビと対峙してたから」

「で、成果はどうだ?」

「正直、緑間がこうなるくらいにはヤバい事があったかな」

「…大丈夫か、緑間」

「あぁ…少し驚いただけなのだよ」

「何があったか、お話して貰えますか」

「面倒だから簡潔に話すよ」



そして本当に簡潔に、健太郎が体育館を出てからの一連の出来事を報告した。

あえていうなら、よくやったなお前等と褒めてやらん事もない。だが、その状況でよく武器を見付けに行ったな、バカなのかお前等。

しかも本当に先陣切ってんじゃねぇよ、あのバカ女。怪我してる自覚をしろ。

そして"これが普通にあった黒いメモでこっちがドロップした黒いメモ"と健太郎が差し出した小さなメモを赤司が受け取りそれを軽く覗き込む。



《僕は人間じゃなくなってしまった。怖いよ、たすけて…あぁ、あの子がまた僕を呼んでる》

《仲間を殺した、友達を殺した、あの子が欲しいと嘆くから。だから、私をたくさん産んで連れていくの。あぁ…まだ足りない…まだ足りないの…もう私は誰であの子は誰なのわからないわからないわからないたすけてたすけて、こわい》



「これドロップしたの多分元人間でさ、そいつ体からゾンビが湧いて出て来てたんだよね」

「顔とかは…」

「ドロドロだったし倒れてたから、はっきりとはわからなかったけど…髪の毛が長かったし女の子だったと思う」

「その女を助けたのは千夏か?」

「あー…いや、原が椅子で。で、消える瞬間に多分、"ありがとう"って言ってた」



ふはっ、あいつまじで慈悲の欠片もねぇな。いや、逆に助けてやったって言うなら慈悲深いのか? ふはっ、似合わねぇ。

つーか、本当にお前等メンタルつえーな。俺も人の事は言えねぇが…緑間が普通の反応なはずなのに、何故か緑間がおかしく見えるくらいには、お前等おかしいからな。

それにしても、色々とわかったが…ゾンビの湧き地が人間ねぇ? 随分と良い趣味してるじゃねぇか。


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