さよならと嗤う | ナノ
07*(2/4)


◆◇◆◇◆

まだ囮を頑張っているのかゾンビに全く遭遇する事もなく、無事に体育館に着いた。

そして今吉さんに報告をしている赤司の隣で、探索したルートとわかる範囲での職員室で手に入れた廃校の見取り図を写した物に書き込んでいく。

とりあえず、数枚作っといてやるか。あって損はねぇだろうし。



「…ほぅ、そうか」

「正直、このノートの"クローン"が男か女かもわからないですし。まぁ、姫野さんが怪しいのは変わりませんが」

「花宮はどう思っとるんや?」

「別にどうも。俺等の中にクローンがいる事がわかっただけいいんじゃないですか。ま、化け物に変わりはないでしょうけど」

「…とりあえず、志波さんに話を聞きたいです。俺は、彼女について何も知りませんから」

「ふはっ、なら…あの呑気に談笑してる女にも聞いた方がいいんじゃねぇのか?」



まぁ、赤司が的を絞るのは当たり前だ。怪しいと疑われてたのは、千夏とあの女だったからな。

千夏は気にしてねぇし知らねぇだろうが、"あいつ怪我をしたとか言って、本当は怪我なんかしてなくて自分が被害者になって、黒幕から除外されようとしてるんじゃねぇか?" とか、要らぬ濡れ衣を着せられてたからな。

ふはっ、ざまぁねぇな。
ま、だからって俺がわざわざ包帯まで取って証明してやる必要もなかったんだが…あの怪我で放置されても困るからな。

そのお陰で、救急箱と怪しい回復薬と掛かれた小瓶を持ち帰って来れた訳だが。

どうせあのバカの事だ、怪我人だってのに先陣切ってゾンビと戦ってそうだからな。だから包帯や消毒は、いくらあっても足りねぇくらいだろう。



「すまない、少しいいか? うちの高尾と緑間が帰ってない様だが…」

「あぁ、はい。ですが、もう暫くしたら戻って来ますよ」

「……なら、いいが」

「それと探索の結果は、教えてくんねぇのかよ。こっちは、待ってるだけでなんもわかんねぇし」

「それも皆が帰って来たらお話ししますので、今はゆっくり休んでいて下さい」

「…わかった。行くぞ、宮地」



ふはっ、ゾンビと追いかけっこしてんだから、そんなすぐすぐ帰って来る訳ねぇだろバァカ。

なんもしねぇで、ボーッとしてるだけの癖に一丁前に人の心配とは随分と良いご身分だな。そんなに心配なら、自分が変わりに行くくらい言えねぇのかよ。

ふっ、自分が可愛いイイコちゃん達は心配するだけで、まぁ…自ら動かねぇか。



「花宮、顔に出とる出とる」

「他人の心配する暇があるなら、もっと他に出来る事があるだろうにって思っただけです」

「そんな器用やないんやろ」

「ははっ、とても素晴らしい言い訳ですね…虫酸が走る」

「まぁ、そう言うなやぁ。みんな不安なんやって! な、赤司」

「まぁ、俺も情報提供を待ってるだけなのもどうかと思いますけどね」

「…自分等、ほんま酷いわぁ」



とか言いつつ、自分もそう思ってる癖によく言うぜ。

それに事実だからな。

探索には行きたくない、だけど情報は欲しい。とんだ、甘ちゃんじゃねぇか。そもそも何様だ、クソ共が。


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