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健ちゃんが消えて、思わず手に持っているナイフを見つめる。後は、真…だけかぁ。
かなり気が重いし。ていうか、もう来てるし。どんだけ、待ってるの嫌だったんだよ。
「おせぇんだよ、しね」
「死ぬのは真なんだよなぁ」
「お前も最後は死ぬだろしね」
「めちゃくちゃかよ」
「おい、さっさとしろブス」
「そんな簡単に出来たら苦労してねぇんだよ、クソ眉毛」
そしてこの容赦の無さである。健ちゃんはあんなに優しかったのに、なんてひでぇやろうなんだ。
しかし、そんなわたしを鼻で笑うと急に腕を引かれたと思ったら、大樹にドンですよ。壁ドンならぬ、大樹ドンですよ。
そして小馬鹿にする様に笑うとわたしからナイフを奪い、何故かわたしに突き付ける。
いやいやいや、それはおかしい。待て待て待て!! わたしが真より先に死んだから脱出が出来なくなるの知ってるよね!? え、なにやってんのこのクソ眉毛。
「お前がさっさと殺らねぇと、脱出が出来ねぇなァ? 使えねぇ奴は、殺してやろうか?」
「無理心中かよ」
「誰がてめぇとするかよ」
「ここにはわたししかいねぇだろ、クソが」
「いいから、早くしろよ。こんな場所にいつまでもいたくねぇだろ」
いや、だからね? そんなのは、わかってるんだよ。だけど普通に考えて、人にナイフを刺すって簡単に出来る事じゃないからね。わかってんのか、クソ眉毛。
そもそも、わたしだって出来る事なら殺される側がよかったし。こんな事まじでやりたくない。
…ほんとに嫌なんだ、よ。
そんなわたしを涼しい顔で見下す真に、腹が立つやら悲しいやら悔しいやらで泣きそうになる。
真にはいっぱい助けて貰ったのに、最後の最後で殺さなきゃならないってどんな仕打ちだよ。もちろん、康次郎や弘、一哉と健ちゃんだってそうだ。
「泣いてんじゃねぇよブス」
「…うるさい、バカ」
「出来る事なら俺がお前を殺して終わりにしてやりてぇけど、そしたら全部がパァだろ」
「わかってる、けど」
「もっと軽く考えろよ。これは幻で、ただの儀式だ。お前は悪くねぇし、人を殺した訳でもねぇ」
「なら、真は簡単に殺せんの?」
「必要とあらば殺す。躊躇う理由がねぇな」
「メンタルクソ眉毛」
「それしか方法がねぇなら仕方ねぇだろ。だから、さっさと終わらせて戻るぞ…千夏」
そう言いながら、白いナイフをわたしに握らせる真に、バッと顔をあげると…ニヤリと真が笑った。
その瞬間、ナイフを握ったわたしの手を掴み自分の胸へ沈めた。思わず、ナイフを離そうとするわたしの腕を痛いくらい強い力で掴み、グイグイとナイフを沈めていく。
そして、やっとわたしの腕を離した真は苦痛に歪む顔をしながら、わたしの涙を乱暴に拭い覆い被さる様にして消えた。
……あぁ、もうほんと狡い。
結局、わたしに選択肢もなにも与えずに勝手に終わらせやがった。
そしてポケットに全ての水晶玉がある事を確認して、大樹を背にしたまま…ゆっくりと白いナイフを胸へ沈めた。
痛くて熱くて、苦しかったけど…これでまた真達に会えるなら安いもんかもしれないと、薄れ行く意識の中、思った。
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