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余りにも康次郎の一言が衝撃的過ぎて、呆然としていると弘と一哉がゲラゲラと笑いながら歩いて来た。
「思ったより早くて草。つーか、古橋まじうける」
「で、なんで一哉まで一緒に来た訳? 次、弘じゃなかった?」
「えぇ? なんかザキが無理そうだって言うから助っ人みたいな? はい、ザキはそこに立ってね〜」
「そして勝手に始めるのやめろ」
「やっぱり、やりにくいかと思ってよ。なら、原のせいにすりゃあいいかなって」
「まじでザキ最低だよねー」
どうやら、医務室みたいに目隠しや耳を塞ぐのは無理だけど、わたしが1人で抱えるくらいならと一哉と一緒に刺して欲しいと。これなら、少しはマシなんじゃないかと思ったとの事。
まじで弘だいすき。
ほんと、まとも。
たまに頭おかしい時あるけど、やっぱり1番普通で1番まともで優しいのは弘だ。
しかも一哉を選ぶ辺り、本当にわたしの事を気にしてくれてるんだなぁ…とか思ったり。
「おい原、ちゃんと狙えよ!」
「え? 多分、大丈夫だってー」
「千夏が気にするだろ!」
「大丈夫、ちゃんとわたしが狙い定めるから」
「後ろ向くか?」
「ううん、ちゃんと見ときたいから」
そして弘がこの時間が辛いだろうから早くしろと急かして来たので、ゆっくりとナイフを構えると一哉が一緒にナイフを持ってくれた。
そんなわたしに向かって、ニカッといつもの様に笑う弘は本当に凄いと思った。
そして一哉がグッと力を入れたので、そのまま一緒に弘にナイフを突き刺した。
弘が消えるまで一哉がこのままでいなと、言うので素直に弘が消えるまで動かずにいた。
「はい、終わり。つーか、まじでなんも言わねぇのがザキらしいよねー」
「痛くなかったかな…」
「大丈夫っしょ。で、千夏ナイフ構えて構えて」
「え、うん」
「じゃ、そのままジッとしててよーん」
「え、いやっ…ちょ!?っ…な、一哉っ…」
「…っ、つっかまえたー。そのままでいなよ」
一哉に言われるがままナイフを構えると、ニヤリと笑った一哉が勢い良く抱き付いて来て、その瞬間にナイフが刺さる感覚がして…咄嗟に手を離そうとしたが、それを一哉は許してくれなかった。
それどころかグイグイと抱き締める力を強めて来て、もはやわたしまで痛いし、苦しい。
「っ…千夏は躊躇するから、こっち…のが、早いっしょ…」
「これ…反れてて、すぐ死ねない…からっ」
「っ…だろう、ね。クッソいてぇ…もん。でも、それもっ…いっかなって…」
「っ、バカじゃないの…」
「説教なら、っ…もど、ったら…きくっ…」
段々とわたしを抱き締める力が弱くなって来て、ぐったりとした一哉を支えていると一哉はゆっくりと消えた。
すぐに死ねなくて痛かっただろうし苦しかっただろうに…ほんとバカ。
…とんだ嫌がらせだよ。トラウマになるだろうが。絶対に帰ったら蹴り入れてやるからな。
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