さよならと嗤う | ナノ
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ゆっくりと目隠しが外されて、久し振りの光に少しふらついた。そんなわたしを弘が支えてくれて、ナイフを腕から抜き取るとポンポンと頭を撫でた。



「で、中庭に行く感じ?」

「中庭に行くまでに何もねぇとも限らねぇからな。1人では行かせられねぇ」

「それに場所を指定されてるのは、最後の千夏だけだからね」

「なら、銃とかを準備しといた方がいいな。ザキ、取りに行くぞ」

「おう。千夏達は、ちっと待ってろよ。おい、原」

「おっと、千夏大丈夫?」

「…最初に比べたら大分落ち着いたし、大丈夫」



弘がわたしを一哉に預ける様に渡すと、康次郎と一緒に医務室から出て行った。

周りが静かな辺り、霧崎以外は、無事(?)に殺せたのかな。そう思いながら軽く医務室内を見渡していると、一哉がガバッと後ろから覆い被さって来て、前につんのめる。



「千夏、思ってたよりまじで豆腐メンタルだよねー」

「失礼な。普通の女の子に比べたらマシだし」

「いやいやぁ、千夏は普通の女の子と比べちゃダメっしょ。そもそも、女かも怪しいからね」

「しね」

「ゾンビや自分のクローンには、容赦なかったのにね」

「ゾンビと生きた人間を同じだと思い始めたら、いよいよサイコパスだと思うんだけど」

「原、言われてんぞ」

「えぇ? でも血は出ないし死体残らないし、そもそも消える事態で普通の人間じゃなくない?」

「今回で、原の頭ん中が色々とヤバいのはよくわかったけどね」

「失礼なんですけどー。ていうか、殺したってより今回のは儀式じゃん? 気にしたら負け負け」



なんというポジティブ。
いや、まぁ…確かに一哉が言ってる事は、間違っちゃいないんだけどさ。

血は出ないし、死体は消えるし、非現実的なんだけどさ。それでも姿形は、見知った相手な訳だし。ナイフを刺す事には変わりないじゃん? それを儀式だから〜で済ませられる一哉は、やっぱり色んな意味で凄いような、ヤバいような。

そもそも、わたしだってここまで取り乱して、出来ないとは思ってなかったし。もう少し頑張れると思ってたから。



「ふはっ、そういう健太郎も躊躇なかったけどな」

「え、だって相手が千夏じゃないなら別に痛くも痒くもなくない?」

「あれ? 瀬戸が1番サイコパスじゃね?」

「俺は、女の子に優しいだけだから」

「ぶっ、誠凛の監督と桃井ェ」

「誠凛の監督は花宮だったでしょ、桃井は俺だったけど。それに最初から興味なかったし、花宮もそんな感じだったじゃん」

「抵抗なく殺しても愉しくねぇからな。苦しめて苦しめて、命乞いするまで追い詰めてからとかなら、まだ愉しんだかもしれねぇけど、なァ?」

「ダメだ、花宮がぶっちぎりのサイコパスだった」
「犯罪者予備軍かな?」



いやいや…なんつー会話をしているんだ、こいつ等。

ていうか、真の場合は肉体的にジワジワ痛め付けてから…精神的に殺しそうだよね。やっぱり、サイコパスじゃねぇか。そしてそんな事を考えてるわたしも大概ヤバい。

はぁ…本当になんていうか、こんな奴等なのに真達といると無駄に安心する辺り、色々とわたしもおかしい気がするけど。

別に本当に現実で人を殺した訳じゃないもんね。



(花宮は完全犯罪で捕まらなそう)
(千夏も捕まらなそう)
(なんでわたしまで入れた?)
(頭良くて顔はいいからじゃね?)
(それに2人共、丸め込むの上手いじゃん)
(いやいや、真には負けるから)
(そもそも、犯罪犯す利点がねぇよバァカ)
(利点とか言ってる辺りがもう、ね)
(うん、怖いよね)
(真は無駄な事嫌いだから犯罪はなさそう)
(まぁ、確かに。犯罪ギリギリを攻めそう)
(あ、俺もそのタイプ!)
(やっぱりこいつ等やばい)

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